租税特別措置法66条の6は、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、それを当該年度の内国法人の損金には算入することはできず、当該特定外国子会社等の未処分所得算出において控除すべきものとして繰り越すことを強制しているものと解すべきであり、内国法人の子会社が特定外国子会社等にあたる場合には、同条3項の適用除外に該当しない以上は、当該特定外国子会社等に適用対象留保金額があるかないかにかかわらず、実質所得者課税の原則(法人税法11条)を適用する余地はない
法人税,消費税及び地方消費税更正処分取消請求控訴事件
【事件番号】 高松高等裁判所判決/平成16年(行コ)第7号
【判決日付】 平成16年12月7日
【判示事項】 租税特別措置法66条の6は、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、それを当該年度の内国法人の損金には算入することはできず、当該特定外国子会社等の未処分所得算出において控除すべきものとして繰り越すことを強制しているものと解すべきであり、内国法人の子会社が特定外国子会社等にあたる場合には、同条3項の適用除外に該当しない以上は、当該特定外国子会社等に適用対象留保金額があるかないかにかかわらず、実質所得者課税の原則(法人税法11条)を適用する余地はない
【判決要旨】 (1) 法人税法11条(実質所得者課税の原則)は、収益についてのみ規定しているが、損失・費用の帰属についても同条の適用があるのは明らかというべきであるから、結局のところ同条は収益と損失・費用の差額であるところの所得の帰属について定めたものと解される。
(2) 省略
(3) 我が国経済の国際化の進展に伴い、内国法人が、法人の所得等に対する税負担が全くないか、又は極端に低い国又は地域(いわゆるタックスヘイヴン)に子会社を設立して経済活動を行いながら、本来内国法人に帰属すべき所得をその子会社に留保することによって、税負担の不当な回避ないし軽減を図る事態が生じるようになったため、課税庁は、法人税法11条(実質所得者課税の原則)を適用し、子会社の損益が内国法人に帰属するものとして課税するなどの方法により対処していた。しかしながら、同条の適用にあたっての所得の実質的な帰属の判断基準が明確でないため、課税執行面における安定性の点で問題があり、同条の適用による対処には一定の制約ないし限界があった。そこで、課税執行面の安定性を確保しながら、外国法人を利用することによる税負担の不当な回避又は軽減を防止して税負担の実質的公平を図るため、昭和53年にタックスヘイブン対策税制が導入された。
(4) タックスヘイブン対策税制の立法趣旨に鑑みれば、租税特別措置法66条の6(内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入)は、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、それを当該年度の内国法人の損金には算入することはできず、当該特定外国子会社等の未処分所得算出において控除すべきものとして繰り越すことを強制しているものと解すべきである。したがって、内国法人の子会社が特定外国子会社にあたる場合には、同条3項の適用除外に該当しない以上は、当該特定外国子会社等に適用対象留保金額があるかないかにかかわらず、実質所得者課税の原則(法人税法11条)を適用する余地はない。
(5)~(8) 省略
【掲載誌】 訟務月報52巻2号667頁
判例タイムズ1213号129頁
税務訴訟資料254号順号9847
LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 税法学558号197頁
税務弘報53巻8号80頁
横浜国際経済法学15巻3号47頁