婚姻費用分担申立事件の即時抗告審において,有責配偶者である相手方(妻)が,婚姻費用の分担を求めることは,信義則に照らして許されないとして,相手方の申立てを認容した原審判を取り消し,申立てを却下した事例
婚姻費用分担申立認容審判に対する即時抗告事件
【事件番号】 福岡高等裁判所宮崎支部決定/平成16年(ラ)第57号
【判決日付】 平成17年3月15日
【判示事項】 婚姻費用分担申立事件の即時抗告審において,有責配偶者である相手方(妻)が,婚姻関係が破たんしたものとして抗告人(夫)に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは,婚姻共同生活が崩壊し,最早,夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから,このような相手方から抗告人に対して,婚姻費用の分担を求めることは,信義則に照らして許されないものと解するのが相当であるとして,相手方の申立てを認容した原審判を取り消し,申立てを却下した事例
【参照条文】 民法1
民法760
家事審判法9-1
【掲載誌】 家庭裁判月報58巻3号98頁
【評釈論文】 民商法雑誌135巻6号1140頁
民法
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
主 文
1 原審判を取り消す。
2 相手方の本件婚姻費用分担請求申立てを却下する。
3 手続費用は原審及び当審とも相手方の負担とする。