第2章 立法の背景
人口減少時代における土地政策の推進~所有者不明土地等対策
我が国では、登記簿などの公簿情報を参照しても所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」や、適正な利用・管理がなされないことで草木の繁茂や害虫の発生など周辺に悪影響を与える管理不全の土地が、人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景とした土地の所有意識の希薄化等を背景に、全国的に増加しています。これらの土地については、生活環境の悪化の原因やインフラ整備、防災上の重大な支障となるなど、対応が喫緊の課題となっています。
所有者不明土地は、東日本大震災の復興でも、大きな問題となりました。
このような課題に対して、平成30年6月6日には、所有者不明土地の公共的目的での円滑な利用を実現するための「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立し、同法は令和元年6月1日に全面施行されました。
また、残された課題である所有者不明土地の発生抑制・解消に向けて、国土交通省では、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(令和元年6月14日所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議決定)、国土審議会における調査審議等を踏まえた検討を行いました。そして、第201回国会に、土地政策の基本理念等を見直し、適正な土地の利用及び管理を確保する施策の総合的かつ効率的な推進を図るとともに、その前提となる地籍調査を円滑化・迅速化するための措置等を一体的に講ずるため、土地基本法、国土調査法等を改正する「土地基本法等の一部を改正する法律案」を提出しました。同法案は令和2年3月27日に成立し、このうち、改正土地基本法については、同年3月31日に公布・施行されました。
また、同年5月26日には、土地基本法に基づく「土地基本方針」が閣議決定されました。今後は、今般の策定と、社会経済情勢の変化や、施策の進捗等を踏まえた適時の見直しを通じて、所有者不明土地対策・管理不全土地対策等の個別施策を着実に展開することとしています。