第6章 法律の概要
1,法務省関連
平成30年11月15日,法務省及び国土交通省が所管する「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行され,法務省関連の制度の運用が開始されました。
この特別措置法では,法務省関連の制度として,登記官が,所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について,亡くなった方の法定相続人等を探索した上で,職権で,長期間相続登記未了である旨等を登記に付記し,法定相続人等に登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられました。
また,地方公共団体の長等に財産管理人の選任申立権を付与する民法の特例も設けられました。
2,国土交通省関連
(1)所有者不明土地を円滑に利用する仕組み
(2)所有者の探索を合理化する仕組み
① 土地等権利者関連情報の利用及び提供
○ 土地の所有者の探索のために必要な公的情報(固定資産課税台帳、地籍調査票等)について、行政機関が利用できる制度を創設
○ 人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景とした土地の所有意識の希薄化等により、所有者不明土地(※)が全国的に増加している。
○ 今後、相続機会が増加する中で、所有者不明土地も増加の一途をたどることが見込まれる。
○ 公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への大きな支障となっている。
経済財政運営と改革の基本方針2017 (平成29年6月9日閣議決定)(抜粋)
・所有者を特定することが困難な土地に関して、地域の実情に応じた適切な利用や管理が図られるよう、・・・公的機関の関与により地域ニーズに対応した幅広い
公共的目的のための利用を可能とする新たな仕組みの構築、・・・等について、・・・必要となる法案の次期通常国会への提出を目指す。
① 公共事業における収用手続の合理化・円滑化 (所有権の取得)
○ 国、都道府県知事が事業認定(※)した事業について、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定
(審理手続を省略、権利取得裁決・明渡裁決を一本化)
ポケットパーク(公園) 直売所(購買施設)
(出典)杉並区 (出典)農研機構 広島県
② 長期相続登記等未了土地に係る不動産登記法の特例
○ 長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録すること等ができる制度を創設
財産管理制度に係る民法の特例
○ 所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度を創設
(※民法は、利害関係人又は検察官にのみ財産管理人の選任請求を認めている)
・不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合(所有者不明土地の外縁): 約 20%
・探索の結果、最終的に所有者の所在が不明な土地(最狭義の所有者不明土地)
: 0.41%
3.所有者不明土地を適切に管理する仕組み
地域福利増進事業のイメージ
(※)マニュアル作成等により、認定を円滑化
(※)照会の範囲は親族等に限定
(※)不動産登記簿等の公簿情報等により調査してもなお所有者が判明しない、
又は判明しても連絡がつかない土地
② 地域福利増進事業の創設 (利用権の設定)
○ 都道府県知事が公益性等を確認、一定期間の公告
○ 市区町村長の意見を聴いた上で、都道府県知事が利用権(上限10年間)を設定
(所有者が現れ明渡しを求めた場合は期間終了後に原状回復、異議がない場合は延長可能)
反対する権利者がおらず、建築物(簡易な構造で小規模なものを除く。)がなく現に利用されていない所有者不明土地について、以下の仕組みを構築。
・仮設道路
地域福利増進事業
公告・縦覧(6ヶ月)
都道府県知事の裁定
(フロー全体を通じて)
民間事業者に対する地方公共団体からの援助
○相談に応じ、地方公共団体が助言
○所有者の探索や補償額の見積もり等について、専門家を斡旋
使用権設定手続
○都道府県知事に裁定を申請
・不明者が名乗り出ない
・反対の申出がない
・探索で判明した所有者、関係権利者のうちに、利用に反対する者がいない
・現に利用されておらず、建築物(簡易なものを除く)が存在しない所有者不明土地
・市区町村長に意見を聴取
・事業の公益性、事業者の適格性を確認
・収用委員会に意見聴取した上で、補償額を裁定。事業者は補償金を供託。
・一定期間(上限10年間)の使用権を設定
・所有者が現れ明渡しを求めた場合には期間終了後に原状回復。異議がない場合は延長可能
・移動式コンサートホール
(出典)東京ミッドタウンマネジメント株式会社HP
(出典)杉並区
・ポケットパーク(公園)
福島県での設置の様子 設置中の様子
(出典)神戸市HP
・まちなか防災空き地
近隣の空き地
仮設園舎
保育園
(建て替え中)
・保育園の建て替えに伴う仮設園舎
・直売所(購買施設)
(出典)福井市
・イベントスペース(広場)
(出典)農研機構 広島県
○恒久的な利用が一般的である公共事業の類型についても、地域住民等の福祉又は利便の増
進に資するもので一時的な利用が考えられるものは対象とする。(例:仮設道路、仮設園舎等)
○公共事業のうち、地域住民の福祉又は利便の増進に資する事業で、原状回復が可能なもの(※)
を対象とする。 (例:公園、緑地、広場、駐車場等)
※ 廃棄物処理場など土地の価値の回復が困難と考えられるものは対象外
○公共事業にはあたらないが、地域住民等の福祉又は利便の増進に資する施設(収益性があるものも含む)で、周辺で不足しているものを対象とする。(例:購買施設、教養文化施設)
<対象事業> 対象事業は法令で明確に規定。事業主体は限定しない。
道路工事等