第11章 地域福利増進事業の手続きの流れ
土地使用権等の取得についての裁定(第13条第1項)
事業者 都道府県知事 事業の内容について住民の意見を反映させるために必要
な措置を実施(努力規定) (第10条第5項)
関係市町村長の意見を聴取するとともに、必要があるときは関係行政機関の長の意見を請求(第11条第2項・第3項)
裁定申請に係る事業が要件に該当するか確認(第11条第1項)
裁定申請書、添付書類を都道府県知事に提出し、土地使用権等の取得について裁定申請(第10条第2項・第3項)
裁定申請を却下し、その旨を事業者に通知(第12条第1項・第3項)
要件に該当する 要件に該当しない
異議の申出があったとき
裁定申請を却下し、その旨を事業者に通知(第12条第2項・第3項)
上記の場合以外
補償金の額について収用委員会に意見を聴取(第13条第4項)
土地使用権等の取得(第15条)
土地使用権の始期までに補償金を供託(第17条第1項)
裁定した旨を公告、事業者等へ通知(第14条)
⑴事業計画、補償金額等について土地等の権利者で異議のある者は申し出るべき旨等を公告し、裁定申請書等を縦覧(6月)(第11条第4項)
⑵公告をしようとするときは、あらかじめ、土地等の権利者で知れている者に対し、裁定申請があった旨を通知(第11条第5項)
<裁定事項>
・ 特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び面積
・ 土地使用権等の始期・存続期間(最長10年)
・ 損失の補償金の額
原状回復・返還
(第24条)
存続期間延長の申請
(第19条第1項)
※①~⑩と同様の手続を踏むこととなるが、
⑤⑴の縦覧期間は3月となる。
事業終了 引き続き事業実施
地域福利増進事業の裁定申請に必要な書類
裁定申請書
地目及び地積
(法第10条第2項)
事業計画書
(第1号)
添付書類 (法第10条第3項)
補償金額見積書
(第2号)
行政機関の意見書
※事業区域の利用に法令の制限がある場合
※事業の実施に許可等が必要な場合
(第3号、第4号)
(第5号)
その他国土交通省令で定める書類
○ 所有者不明土地の使用権を取得するには、都道府県知事の裁定を受ける必要がある。裁定を申請するには、裁定申請書のほか、事業計画書や補償金額見積書等を作成する必要がある。
○ 申請に必要な書類の作成等に当たっては、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、弁護士、土地家屋調査士、補償コンサルタント等の専門家の協力を得ながら進めることが有効。
○ 申請に当たっては、内容やスケジュール等について、都道府県・市町村とあらかじめ協議をしておくことが望ましい。
○ 都道府県知事は、裁定申請のあった事業が法第11条第1項各号の要件に該当するか確認する。申請内容に不十分な点等があった場合であっても、法第26条に基づき、事業者に対して、必要な報告を求めること等が可能となっているので、直ちに裁定申請を却下するのではなく、申請書類の補正等を促すことが望ましい。
測量等のための土地への立入り、障害物の伐採等
○ 申請書類の作成のため測量や調査を行う必要があるときは、判明している所有者の同意を得て土地に立ち入ることとなる。
○ 全ての所有者が不明で同意を得ることができない場合等には、都道府県知事の許可を得た上で、特定所有者不明
土地等への立入りや、特定所有者不明土地にある障害物の伐採等を行うことができる。
○ 立入りや伐採等に当たっては、当該土地が特定所有者不明土地であることが求められるため、土地の所有者の探
索を行う必要がある。
許可に当たっての確認の観点
特定所有者不明土地への立入り等
(法第6条)
・ 事業が、法第2条第3項各号に掲げる事業に該当するものであること。
・ 土地が特定所有者不明土地であること。
・ 立入りの目的が、地域福利増進事業の実施の準備のための測量又は調査
であること。
※ 事業実施に行政機関の許認可等が必要な場合であっても、当該許認可の取
得等は確認不要。
※ 法第11条第1項第3号~第8号の要件についても、確認不要。
障害物の伐採等
(法第7条)
・ 法第6条の許可の申請手続がなされていること。
・ 他人の土地に立ち入って測量又は調査を行うに当たり、障害物の伐採等を
行うやむを得ない必要があること。
・ 申請書により対象となる障害物の数量や範囲が特定されており、障害物の
伐採等の方法、範囲、期間が、測量又は調査の必要性、所有者が受ける不
利益の程度等からみて、妥当であること。
※ 法第7条第3項の「障害物の現状を著しく損傷しないとき」とは、例えば、植物のごく一部を伐採する、垣や柵のごく一部を取り外すといった場合が該当すると考えられる。
住民の意見を反映させるために必要な措置
○ 地域福利増進事業は地域のための事業なので、事業者は、事業の内容に住民の意見を反映させるための措置を
講じた上で、事業計画を作成することが望ましい。
○ この措置は、事業の賛否を問うための手続ではないので、対象とした範囲内の全ての住民の意見を聴く必要はない。
○ 住民のほか、判明している所有者や権利者に対しても、裁定申請の前に事業の内容を説明しておくことが重要。
住民の意見を反映させるために必要な措置
協議会の開催
・ 広報誌等で参加を呼びかけ、事業に対して自由に意見や提案を表明してもらう。
・ 普段開催されている自治会や町内会の集会で意見を聞くことも考えられる。
意見募集の実施 ・ 事業計画案とともに、事業計画案に対する意見の提出方法、提出期限、提出先等を、広報誌等で公表し、意見や提案を募集する。
措置の対象となる「住民」の範囲
・ 事業の種別・規模に応じて、事業の実施により影響が及ぶ範囲を考慮して設定することが考えられる。
(例)小規模な広場(ポケットパーク) : 自治会・町内会や街区の範囲
(例)小規模な購買施設(コンビニエンスストア) : 概ね半径500mの範囲
補償金額見積書(損失の補償)
補償金の額 = 1年間当たりの借賃等相当額(①) × 年金現価率(②)
・ これらを踏まえると、土地使用権の取得の対価の額は、宅地等の場合には、次式により得られる。
・ 近傍類地に賃借の事例があるときは、次に掲げる率を土地の価格に乗じて得た額を参考としつつ、当該事例に基づ
いて定め、近傍類地に賃借の事例がないときは、当該額とすることを基本とする。
・ 土地の価格については、特定所有者不明土地は、所有者が登記手続を適時に行っておらず、相当な努力を払ったと認められる方法により探索を行っても所有者を確知できないことに起因し、その使用の方法は地域福利増進事業に限られることから、正常な価格から、最有効使用に対する利用価値の減分を考慮して求めることを基本とする。
・ 地域福利増進事業の実施によって、土地所有者は本来行うべき土地の維持管理費用(廃棄物処分費、清掃費、除草費等)を免れることになるため、1年間当たりの借賃等相当額からこれらの維持管理費用相当額を控除する等の考慮をし、補償金額を求める。
①1年当たりの借賃等相当額
②年金現価率
・ 元本を一定利率で複利運用しながら毎年一定額を取り崩す場合に、必要となる元本を求めるために当該一定額に乗じる率のことであり、次式により求められる。
年金現価率 = r : 年利率(民事法定利率(3%)を用いることが考えられる) n : 年数
【機密性2】
発出元 → 発出先 作成日_作成担当課_用途_保存期間
1 − (1 + )−r
【機密性2】
発出元 → 発出先 作成日_作成担当課_用途_保存期間
土地使用権の取得の対価の額
= 土地の正常な価格− 最有効使用に対する利用価値の減分 × 0.04
− 1 年間当たりの維持管理費用相当額 ×
1 − 1 + 0.03
−存続期間の年数
0.03
○ 土地使用権の取得の対価の額に相当する補償金の額は、次式により算定することを基本とする。
関係市町村長の意見の聴取
都道府県
・ 「関係市町村長」には、事業区域内の土地の所在地を管轄する市町村の長が該当する。
・ 地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図る見地からの意見の内容としては、例えば、以下のようなものが想定される。
・ 市町村の各種計画との整合性等に係る意見
・ 施設の必要性等に係る意見
・ 施設の利用条件等に係る意見
・ 地域住民の反対運動の有無やその内容
・ 意見の聴取に当たっては、例えば計画との整合性について意見を聴取する場合は計画の名称や内容を明らかにする等、意見を聴取したい内容を意見聴取書に具体的に記載する。
市町村
・ 意見は、法第11条第1項第1号の要件に該当するかについて都道府県知事が確認をする際に参考とするものであり、市町村長は、当該要件に該当するかについてまで判断して意見を述べる必要はない。
・ 意見聴取を受けた市町村の部局は、その旨を情報提供担当部局に共有し、情報提供担当部局が情報提供について同意をしなかった土地所有者と思料される者に対し、裁定申請があった旨の連絡をすることができるようにすることが考えられる。
○ 都道府県知事は、要件の確認に当たって、地域の住民のためになるかといった観点からの関係市町村長の意見を聴取する。
公告及び縦覧
公告
・ 公告の方法は、広報以外の手段(ウェブサイトへの掲載、新聞への掲載等)によることとしても差し支えない。
・ 公告の内容を掲示する際、特定所有者不明土地に確知所有者が存在する場合は、確知所有者の同意をとって、特定所有者不明土地において掲示をすることが望ましい。
・ 掲示の期間は、縦覧の期間と同様に6月間とすることを基本とする。
縦覧
・ 都道府県知事は、補償金額見積書に記載された確知所有者又は確知権利者に被支援措置者が含まれる場合において、補償金額見積書に被支援措置者の現住所が記載されているときは、当該現住所について塗抹処理等の措置をとった補償金額見積書の写しを縦覧する。
・ 縦覧の場所は、都道府県の庁舎のほか、必要に応じて、事業区域の付近の出張所・事務所等とすることが望ましい。
特定所有者不明土地の所有者等の申出等
・ 都道府県知事は、異議の申出があった場合(特に、不明であった所有者からの異議の申出があった場合で、当該申出によっても土地の所有者の全部を確知することができない場合)は、直ちに裁定申請を却下するのではなく、異議を申し出た者と事業者とで話し合いをするよう、あっせんすることが望ましい。話し合いの結果、異議の申出が取り下げられた場合は、異議の申出がなかったものとして裁定をすることができる。
・ 「権原を証する書面」としては、土地の登記事項証明書、戸籍謄本、遺産分割協議書の写し、公正証書遺言の遺言書の写し 、売買等の契約書の写し等が想定される。
○ 都道府県知事は、事業が全ての要件に該当すると認める場合には、所有者不明土地であるかどうかや、反対する権利者がいないかを確認するため、公告・縦覧を行う。
○ 公告は、公報等によって行うほか、現地での掲示も必要。
通知
・ 裁定申請通知書には、特定所有者不明土地の所在・地番・地目・面積、公告日、縦覧場所、縦覧期間を記載し、通知を受け取った確知所有者・確知権利者が申請内容を縦覧により確認できるようにする。
収用委員会の意見聴取
都道府県
・ 都道府県知事は、縦覧期間満了後速やかに裁定を行うことができるよう、収用委員会の会議の開催の方法も勘案しつつ、適切な時期に収用委員会の意見を聴取することが望ましい。
・ 意見聴取に当たっては、都道府県知事が適切と考える補償金の額を記載した意見照会書に、以下の書類を添えて収用委員会に送付する。
収用委員会
・ 都道府県知事が精査した補償金額に特に問題がない場合は、その旨を回答する。
・ 都道府県知事が精査した補償金額と異なる額にするべきと判断する場合は、その額と算定の根拠を回答する。
・ 回答に当たっては、土地収用法における補償金の額の算定の考え方ではなく、本法における補償金の額の算定の考え方に沿って補償金の額を確認することに留意が必要。
・ 収用委員会は、裁定主体ではなく、都道府県知事が精査した補償金額に特に問題がないかを確認する立場であることを踏まえ、土地収用法の裁決とは異なり、意見回答に当たっては、委員が参集して会議を開催せずとも、持ち回りによる開催とすることも考えられる。
○ 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、補償金の額について、収用委員会の意見を聴取する。
裁定等
裁定申請の却下
裁定
裁定の通知・公告
・ 事業者は、法第12条第3項の通知を受けたときは、特定所有者不明土地等の確知所有者及び確知権利者にその旨を通知することが望ましい。
・ 事業者は、裁定申請の却下に不服があるときには、行政不服審査法に基づく審査請求を行うか、行政事件訴訟法に基づく行政訴訟を提起することができる。
・ 損失の補償金の額は、裁定時の価格として定める。(事業者は、裁定申請時の価格として算定しているため、都道府県知事は、事業者が算定した額で問題がない場合でも、物価変動を考慮して裁定することが求められる。)
・ 所有権登記名義人が死亡し、土地が相続人の共有状態となっているが、遺産分割協議が未了のため各相続人の持分が不明である場合には、確知している相続人の異議がない場合に限り、法定相続分で補償金の額を裁定する
ことができる。
・ 公告の方法は、公報以外の所定の手段としては、ウェブサイトへの掲載、新聞紙への掲載が考えられ、公報の代わりにこれらの手段をとることとしても差し支えない。
・ 事業者は、裁定事項の内容が裁定申請書等の内容と異なる場合において、これに不服があるときには、行政不服審査法に基づく審査請求を行うか、行政事件訴訟法に基づく行政訴訟を提起することができる。
・ 税の特例措置の申請のため、事業者から求めがあった場合は、都道府県知事は、受理印を押した裁定申請書の写しを事業者に交付する。
○ 都道府県知事は、要件に該当しないこと等を理由に裁定申請を却下する場合を除き、裁定をする。
補償金の供託
○ 事業者は、裁定において定められた使用権の始期までに補償金を供託しなければならず、使用権の始期までに補償金を供託しない場合、裁定は効力を失うこととなる。
反対給付の内容
所有者不明土地の利用の円滑化等に
関する特別措置法第17条第1項
・ 特定所有者不明土地の使用権の補償金の供託の場合には、原則として、特定所有者不明土地に関し所有権その他
の権利を有する者(以下「土地所有者等」という。)を被供託者として土地所有者等ごとに1つの供託書により行う。
・ 補償金の供託をした裁定申請者は、速やかに供託書正本の写しを都道府県知事に提出する。
供託書の記載例(土地の使用権の補償金の供託の場合)
・ 事業者は、都道府県知事が裁定の取消事由に該当するかどうかを判断できるよう、事業計画に変更がある場合や事業を廃止しようとする場合には、都道府県知事から法第26条の規定により報告を求められた場合でなくとも、都道府県知事に対して報告を行うことが望ましい。
・ 土地使用権は、公法上の権利であり、登記は不要。
・ 土地使用権の存続期間中に、不明であった所有者が現れ、明渡しや原状回復を要求されたとしても、所有者不明土地に関する土地使用権以外の権利は、事業者による所有者不明土地の使用のため必要な限度においてその行使を制限されるとされていることから、土地使用権に基づき事業を継続して実施することができる。したがって、事業の支障となる事案が生じた場合には、事業者は、土地使用権に基づき妨害排除の請求をすることができる。
使用権の取得
使用権の性質について
その他事業実施中の留意事項
○ 事業者は、裁定において定められた補償金を供託すれば、裁定において定められた使用権の始期において、使用権を取得することができる。
○ 使用権の存続期間中に、不明であった所有者が現れ、明渡しや原状復帰を要求されたとしても、使用権に基づき事業を継続して実施することができる。
標識の設置
○ 事業者は、使用権が設定された土地(困難なときは事業区域内の土地)に、必要事項を表示した標識を設置しなければならない。
下記の土地は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第15条の規定に基づき、○○県知事の裁定により下記の使用権者がその使用権を取得しており、同法第2条第3項に規定する地域福利増進事業(広場)の用に供されています。
使用権者の氏名又は名称 ○○二丁目自治会
使用権設定土地の所在及び地番 ○○県○○町○○2-1-3
土地使用権等の始期 令和○年○月○日
土地等使用権の存続期間 10年
裁定を担当した都道府県の 部局名 ○○県○○局○○部○○課
部局の名称及び連絡先 連絡先 ○○-○○○○-○○○○
同法第20条第2項の規定に違反して、本標識を使用権者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊した場合には、同法第50条第1項第2号の規定により、30万円以下の罰金に処されます。
・ 「裁定を担当した都道府県の部局の名称及びその連絡先」は、不明であった所有者が現れたときに、自らが所有者である旨を裁定権者である都道府県知事に申し出たり、所有者が都道府県知事から本制度についての説明を受け、供託金の還付を申し出ることができるように記載するものなので、都道府県の担当部局と調整の上、適切な名称・連絡先を記載することが必要。
・ 以下のように、標識を使用権設定土地の区域内に設けることが困難であるときは、事業区域内の見やすい場所に標識を設けることができる。
・ 使用権設定土地が事業により整備する建築物の敷地となっている場合など物理的に標識の設置が不可能な場合
・ 公園等の施設の中心部に使用権設定土地が位置している場合など標識の設置により施設の機能等を損なう場合
都道府県
・ 裁定時には不明であった所有者が、使用権設定土地を訪れ、標識によって自らの土地が地域福利増進事業の用に供されていることを確認した場合、標識に記載された都道府県の裁定担当部局に連絡をしてくることが想定される。この場合、裁定担当部局は、所有者に対して以下の事項を説明し、制度に対する理解を得るよう努める。
・ 当該土地は、土地使用権の存続期間満了まで使用できないが、土地等使用権の存続期間の満了時には原則として原状回復がされた上で返還されること
・ 補償金が供託されており、所定の手続を経た上で当該補償金の還付を受けることができることや、その還付手続の進め方
・ 土地等使用権の存続期間の満了後、まだ他に不明である所有者がいる場合には、事業者が存続期間の延長の裁定を申請する可能性があるが、異議を申し出れば、引き続き土地を使われることはないこと
・ 裁定担当部局は、不明であった所有者から連絡があった場合、その旨を事業者に連絡する。
事業者
・ 事業者は、都道府県の裁定担当部局を介して所有者に対する説明の機会を設け、事業内容や返還時の原状回復の方法等について説明し、事業の実施に理解を得るよう努めることが重要。
・ 特に、土地等使用権の存続期間の延長を検討している場合は、その旨も説明し、存続期間の延長の申請時に異議が出ないよう話し合うことが重要。
不明所有者が現れたときの対応
○ 不明であった所有者が現れた場合、都道府県は、トラブル防止のため、使用権の存続期間の満了時に原状回復した上で返還されること、補償金を受け取ることができること等を説明する。
○ また、事業者は、事業の円滑な遂行のため、事業内容等を所有者に説明し、事業の実施について理解を得ることが重要。
権利の譲渡
○ 事業者は、都道府県知事の承認を受けて、使用権を別の者に譲渡することができる。したがって、事業の実施中に、事業の実施のための別の法人を設立する場合でも、権利を譲渡することにより、改めて裁定申請をすることなく、継続して事業を実施することができる。
○ 都道府県知事は、権利の譲渡の承認に当たっては、譲渡前から変更となる部分について法第11条第1項各号の要件に該当するかどうかを確認する。
都道府県
・ 権利の譲渡の申請があった場合は、譲渡前から変更となる部分について法第11条第1項各号の要件に該当するかどうかを確認する。譲渡前から変更がない部分については、改めて確認する必要はない。
・ 事業の種別が変更になる等、譲渡人の事業計画からの変更が軽微なものと認められない場合は、申請を却下する。
事業者
・ 譲渡承認申請書とその添付書類は、裁定申請書とその添付書類と同様に作成する。
原状回復・返還
○ 事業者は、使用権の存続期間の満了時に、使用権が設定された土地を原状に回復した状態で返還する必要がある。
○ 判明している所有者全員の同意が得られている場合には、原状回復の必要はない。
○ 事業に不要であるとして所有権を取得し除却した物件については、再度設置する必要はない。
・ 「原状」とは、土地使用権等の始期の時点における物理的状態をいう。なお、物件所有権を取得し除却した物件(例:事業実施に不要な雑木)は、再度設置する必要はない。
・ 土地等使用権の存続期間満了時における使用権設定土地の状況が、原状に比べて価値が増加している場合
(例:排水路を設置した場合、舗装をした場合)であっても、原則として、原状に回復しなければならない。
・ 原状回復が不要となるのは、確知所有者(土地等使用権の存続期間中に確知することができた者を含む。)の全ての同意が得られた場合に限られる。ただし、確知所有者の全ての同意が得られなかったとしても、事業による整備の内容が共有物の管理(民法第252条)に該当するような場合(例:元々舗装されていた土地について、事業により再舗装した場合)には、同意を得られた確知所有者の持分が過半数となれば、原状回復は不要。
存続期間延長の申請
使用権の存続期間の延長についての手続と使用権の取得についての手続との違い
要件確認に当たっての留意事項
○ 事業者は、使用権の存続期間満了後も、引き続き所有者不明土地を利用して事業を実施したい場合には、使用権の存続期間の延長についての裁定を申請することができる。
○ 使用権の存続期間の延長についての手続は、概ね使用権の取得についての手続と同様であるが、一部の手続が省略される。
・ 住民の意見を反映させるために必要な措置(法第10条第5項)は不要。
・ 都道府県知事による裁定申請書等の縦覧の期間(法第11条第4項)は6月間ではなく3月間。
・ 存続期間の延長についての裁定を申請する場合の土地所有者等の探索は、前回の探索時から事情の変化が想定できない事項については、改めて探索を行う必要はなく、前回探索時の結果を活用して差し支えない。
(例)前回探索時に既に死亡していた登記名義人について、戸籍謄本等を再度請求する必要はない。
要件 留意事項
事業が地域福利増進事業に該当するものであること
(第1号)
・ 法第2条第3項第8号の事業(購買施設・教養文化施設)にあっては同種の施設
が存続期間内に新たに立地する場合も考えられる。ただし、このことをもって存続期間の延長を認めないこととすると、地域住民等の福祉・利便が損なわれることとなるため、新たに立地した施設が撤退する可能性、事業により整備されている施設が果たしてきた役割、地域住民等や地元市町村の意向、新たに立地した施
設と事業により整備されている施設との距離等を踏まえて総合的に判断し、同種の施設が著しく不足しているものとして、地域福利増進事業に該当すると判断することも考えられる。
土地使用権の目的となる土地が特定所有者不明土地に該当するものであること
(第2号)
・ 事業により利用されており、簡易建築物以外の建築物が整備されていることが想定されるため、特定所有者不明土地である必要はなく、所有者不明土地であることが確認できれば、要件に該当する。
報告徴収・立入検査
○ 都道府県知事は、事業が適切に実施されているかどうかを把握するため、事業者に対し報告徴収・立入検査をすることができる。
○ 報告徴収・立入検査は、裁定申請中の事業者や事業を行っていた者に対してもすることができる。
・ 都道府県知事は、事業が法第11条第1項各号に掲げる要件に該当しているかどうかを確認するため、年に1回程度、事業者に対し、地域福利増進事業の実施状況等に関する報告を求めることが望ましい。
・ 報告時期は、事業者の事業年度開始時期に応じ、適切な報告が得られる時期を設定することが望ましい。
報告徴収
立入検査
・ 都道府県知事は、報告徴収の結果、事業が法第11条第1項各号に掲げる要件のいずれかに該当しなくなっているおそれがある場合や、裁定申請に係る事業計画に従って事業を実施していないおそれがある場合など、事業の適正な実施のために必要と認められる場合には、立入検査を行うことができる。
・ 立入検査の結果、是正すべき点があった場合には、都道府県知事は、事業者に対してその旨を通知し、是正状況について、改めて報告を求めることが望ましい。
裁定の取消し
○ 都道府県知事は、事業者が法令に違反した場合や、事業が要件に該当しなくなった場合等には、裁定を取り消すことができる。
○ 事業者が事業を廃止する場合には、都道府県知事は、事業が要件に該当しなくなったと判断し、裁定を取り消すことになる。
裁定の取消事由 留意点
実施する事業が第11条第1項各号(第2号を除き、第19条第2項
において準用する場合を含む。)に掲げる要件のいずれかに該当しないこととなったとき。
(法第23条第1項第2号)
・ 土地等使用権の存続期間内に、不明所有者の全部が現れた場合は、所有者
不明土地に該当しないこととなり、法第11条第1項第2号に掲げる要件に該当
しないこととなるが、同号は法第23条第1項第2号の取消しに係る要件から除
かれているため、裁定の取消しの対象とはならない。
・ 土地等使用権の存続期間内に、周辺の地域において購買施設又は教養文化
施設が新たに立地して同種の施設が著しく不足していない状況となった場合
であっても、法第23条第1項第2号に該当する(=法第11条第1項第1号に掲げる要件に該当しないこととなった)ものとして、裁定を取り消す必要はない。
・ 都道府県知事は、使用権者から事業を廃止しようとする旨の報告があった場
合は、法第23条第1項第2号に該当する(=法第11条第1項第7号に掲げる要件に該当しないこととなった)ものとして、裁定を取り消すことができる。
正当な理由なく裁定申請に係る事業計画に従って事業を実施していないと認められるとき。
(法第23条第1項第3号)
・ 事業者から事業計画の変更の報告があった場合は、変更となる部分について
法第11条第1項各号の要件に該当するかどうかを確認する。変更がない部分については、改めて要件に該当するかどうかを確認する必要はない。
・ 要件に該当すると認める場合には、裁定を取り消す必要はない。
・ 事業計画の変更の内容が、事業の種別の変更等、軽微な変更と認められないものである場合は、法第23条第1項第3号に該当するものとして、裁定を取り消す。
申請が相当でないと認めるとき
○ 土地収用法の事業の認定を受けた収用適格事業について、その起業地内にある特定所有者不明土地を収用等しようとするときは、都道府県知事に対し、特定所有者不明土地の収用等についての裁定を申請することができる。
(収用委員会による権利取得裁決・明渡裁決を都道府県による裁定に一本化するとともに、審理手続を省略)
○ 都道府県知事による公告・縦覧の結果、土地所有者等から申出があった場合等には、特例制度による手続は却下され、必要に応じ土地収用法に基づく裁決手続を行うこととなる。
○ 都市計画法の認可等を受けた都市計画事業についても、同様に新法の裁定手続が可能。
所有者不明土地法の裁定手続事業認定の申請
申請書の公告・縦覧
事業認定の告示
収用委員会への権利取得裁決の申請
申請書の公告・縦覧
裁決手続開始の決定審理
補償金の支払等
権利取得裁決
収用委員会への明渡裁決の申請
審理
明渡裁決
地権者との任意交渉
事業実施
土地収用法の事業認定手続 土地収用法の裁決手続
都道府県知事への裁定の申請
補償金の供託
申請が相当であると認めるとき
土地所有者等から異議申出があったとき等以外のとき
起業地内にある特定所有者不明土地を収用等する場合
補償金の支払等
裁定申請があった旨等の公告・事業計画書等の縦覧
(2週間)
裁定手続開始の決定
裁定
土地収用法の特例の概要
収用委員会の意見聴取
裁定申請の却下
土地所有者等から異議申出があったとき等
事業者 都道府県知事
裁定申請書、添付書類を都道府県知事に提出し、特定所有者不明土地の収用等について裁定申請(第27条第2項・第3項)
土地収用法の事業認定の告示
申請に係る土地が特定所有者不明土地に該当するかなど、申請が相当であるか確認(第28条第1項)
裁定申請を却下し、その旨を事業者に通知(第29条第1項・第3項)
相当である 相当でない異議の申出があったとき
裁定申請を却下し、その旨を事業者に通知(第29条第2項・第3項)
裁定手続の開始の決定・登記等(第30条第1項)
上記の場合以外
特定所有者不明土地の収用等について裁定(第32条第1項)
権利取得
(第34条においてみなして適用する土地収用法第101条)
補償金の供託
(第34条においてみなして適用する土地収用法第95条)
裁定した旨を公告、事業者等へ通知(第33条) ⑴ 補償金額等について土地所有者等又は準関係人で異議のある者は申し出るべき旨等を公告し、裁定申請書等を縦覧( 2週間)(第28条第1項)
⑵公告をしようとするときは、あらかじめ、土地等の権利者で知れている者に対し、裁定申請があった旨を通知(第28条第2項)
補償金の額について収用委員会に意見を聴取(第32条第4項)
土地収用法の特例
裁定申請
【法律】
(裁定申請)
第二十七条
2 前項の規定による裁定の申請(以下この款において「裁定申請」という。)をしようとする起業者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載し
た裁定申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
3 前項の裁定申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 土地収用法第四十条第一項第一号の事業計画書に記載すべき事項に相当するものとして国土交通省令で定める事項を記載した事業計画書
二 次に掲げる事項を記載した補償金額見積書
イ 特定所有者不明土地の面積(特定所有者不明土地を含む一団の土地が分割されることとなる場合にあっては、当該一団の土地の全部の面積を含む。)
ロ 特定所有者不明土地にある物件の種類及び数量
ハ 特定所有者不明土地等の確知所有者の全部の氏名又は名称及び住所
ニ 特定所有者不明土地の確知関係人(土地収用法第八条第三項に規定する関係人(ホにおいて単に「関係人」という。)であって、相当な努力が払われたと
認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなお確知することができないもの以外の者をいう。次条第二項において同じ。)の全部の氏名又
は名称及び住所並びにその権利の種類及び内容
ホ 特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等(特定所有者不明土地の所有者又は関係人をいう。以下同じ。)が
受ける損失の補償金の見積額及びその内訳
三 その他国土交通省令で定める書類
裁定申請書
事業計画書
補償金額見積書
その他国土交通省令で定める書類
公告・縦覧
【法律】
(公告及び縦覧)
第二十八条 都道府県知事は、裁定申請があった場合においては、起業者が収用し、又は使用しようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認
めるときその他当該裁定申請が相当でないと認めるときを除き、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を公告し、前条第二項の裁定申請
書及びこれに添付された同条第三項各号に掲げる書類を当該公告の日から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。
四 その他国土交通省令で定める事項
2 都道府県知事は、前項の規定による公告をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、裁定申請があった旨を、前条第三項第
二号の補償金額見積書に記載された特定所有者不明土地の確知所有者及び確知関係人に通知しなければならない。
【省令】
(裁定申請があった旨等の公告の方法)
第四十条 法第二十八条第一項の規定による公告は、公報その他所定の手段により行わなければならない。
(公告事項)
第四十二条 法第二十八条第一項第四号の国土交通省令で定める事項は、同項の規定による公告の日から二週間以内に同項第三号の規定による申出
がないときは、都道府県知事が法第三十二条第一項の裁定をすることがある旨とする。
(裁定申請があった旨の通知の方法)
第四十三条 法第二十八条第二項の規定による通知は、文書により行わなければならない。
・ 公告の方法は、規則第40条において、「公報その他所定の手段により行わなければならない」と定めているが、公報以外の
「所定の手段」としては、ウェブサイトや新聞紙への掲載が考えられ、公報の代わりにこれらの手段をとることとしても差し支え
ない。
・ 縦覧場所は、都道府県の庁舎のほか、必要に応じて、起業地の付近の出張所・事務所等とする。
・ 都道府県知事は、補償金額見積書に記載された特定所有者不明土地の確知所有者又は確知関係人に被支援措置者が含まれる場合において、補償金額見積書に被支援措置者の現住所が記載されているときは、当該現住所について塗抹処理等の措置をとった補償金額見積書の写しを縦覧するものとする。
・ 規則第43条の文書には、特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び面積、公告日、縦覧場所並びに縦覧期間を記載するものとする。
公告
縦覧
通知
異議申出・裁定申請の却下
【法律】
(公告及び縦覧)
第二十八条
三 次のイ又はロに掲げる者は、縦覧期間内に、国土交通省令で定めるところにより、その権原を証する書面を添えて、都道府県知事に当該イ又はロに
定める事項を申し出るべき旨
イ 特定所有者不明土地所有者等又は特定所有者不明土地の準関係人(土地収用法第四十三条第二項に規定する準関係人をいう。)であって、前
条第二項の裁定申請書又は同条第三項第二号の補償金額見積書に記載された事項(裁定申請書にあっては、同条第二項第一号、第二号及び
第四号に掲げる事項を除く。)について異議のあるもの 当該異議の内容及びその理由
ロ 特定所有者不明土地の所有者であって、前条第三項第二号の補償金額見積書に特定所有者不明土地の確知所有者として記載されていないもの(イに掲げる者を除く。) 当該特定所有者不明土地の所有者である旨
(裁定申請の却下)
第二十九条 都道府県知事は、裁定申請があった場合において、起業者が収用し、又は使用しようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認めるときその他当該裁定申請が相当でないと認めるときは、当該裁定申請を却下しなければならない。
2 都道府県知事は、前条第一項の規定による公告をした場合において、同項の縦覧期間内に同項第三号イの規定による申出があったとき又は同号ロに掲げる者の全てから同号ロの規定による申出があったときは、当該公告に係る裁定申請を却下しなければならない。
3 都道府県知事は、前二項の規定により裁定申請を却下したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その理由を示して、その旨を当該裁定申請をした起業者に通知しなければならない。
・ 法第28条第1項第3号の「権原を証する書面」は、土地の登記事項証明書、戸籍謄本、遺産分割協議書の写し、公正証書遺言の遺言書の写し、売買等の契約書の写し等とする。
・ 法第29条第1項の規定による裁定申請の却下についての行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく訴訟に関しては、審査請求及び訴訟についての特例を定める土地収用法第10章は適用されないため、行政不服審査法又は行政事件訴訟法に定めるところによることとなる。
異議申出
裁定申請の却下
裁定手続開始の決定
【法律】
(裁定申請の却下)
第二十九条 都道府県知事は、裁定申請があった場合において、起業者が収用し、又は使用しようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認めるときその他当該裁定申請が相当でないと認めるときは、当該裁定申請を却下しなければならない。
2 都道府県知事は、前条第一項の規定による公告をした場合において、同項の縦覧期間内に同項第三号イの規定による申出があったとき又は同号ロに掲げる者の全てから同号ロの規定による申出があったときは、当該公告に係る裁定申請を却下しなければならない。
3 都道府県知事は、前二項の規定により裁定申請を却下したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その理由を示して、その旨を当該裁定申請をした起業者に通知しなければならない。
(裁定手続の開始の決定等)
第三十条 都道府県知事は、裁定申請があった場合においては、前条第一項又は第二項の規定により当該裁定申請を却下するときを除き、第二十八条第一項の縦覧期間の経過後遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定手続の開始を決定してその旨を公告し、かつ、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する登記所に、当該特定所有者不明土地及び当該特定所有者不明土地に関する権利について、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定手続の開始の登記を嘱託しなければならない。
・ 裁定手続開始の決定は、裁定手続開始の登記の嘱託にあたり、登記原因を証する書面が必要となるので、書面(以下「裁定手続開始決定書」という。)で行うものとする。
・ 裁定手続開始決定書には、起業者の氏名又は名称、事業の種類、裁定手続の開始を決定する土地の所在、地番、地目及び地積等(決定する土地の区域が一筆の土地の一部であるときは、その旨及び当該一部の面積を記載し、図面を添付してその区域を明示すること。)、土地所有者の氏名又は名称及び住所、関係人の氏名又は名称、住所及びその権利の種類(既登記の権利については、その登記の申請書の受付年月日及び受付番号を含む。)並びに裁定手続の開始を決定した年月日を記載するものとする。
・ 二筆以上の特定所有者不明土地について、その土地所有者が同一であって関係人のない場合、又は土地所有者が同一でかつ関係人が同種の権利を有する場合(例えば、関係人が地上権者であるときは、各土地について共通して地上権を有する場合)は、一括して一個の裁定手続開始決定をすることができる。
裁定手続開始の決定
・ 法第29条第1項の規定による裁定申請の却下についての行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく訴訟に関しては、審査請求及び訴訟についての特例を定める土地収用法第10章は適用されないため、行政不服審査法又は行政事件訴訟法に定めるところによることとなる。
裁定申請の却下
収用委員会の意見聴取
【法律】
(裁定)
第三十二条
2 前項の裁定(以下この款において単に「裁定」という。)においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
五 特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補償金の額
4 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、第二項第五号に掲げる事項について、あらかじめ、収用委員会の意見を聴かなければならない。
・ 意見聴取に当たっては、都道府県知事が適切と考える補償金の額を記載した意見照会書に、その算定の根拠を記載した書類、事業者から提出のあった裁定申請書、補償金額見積書、補償金の見積額の積算の基礎を明らかにする書類の写しを添えて収用委員会に送付するものとする。
・ 収用委員会は、都道府県知事が精査した補償金額に特に問題がないかを確認する立場であることを踏まえ、意見回答に当たっては、土地収用法の裁決とは異なり、委員が参集して会議を開催せずとも、持ち回りによる開催とすることも考えられる。
裁定
【法律】
(裁定)
第三十二条 都道府県知事は、第二十九条第一項又は第二項の規定により裁定申請を却下するとき及び裁定申請が次の各号のいずれかに該当するときを除き、裁定申請をした起業者が当該裁定申請に係る事業を実施するため必要な限度において、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定をしなければならない。
4 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、第二項第五号に掲げる事項について、あらかじめ、収用委員会の意見を聴かなければならない。
(裁定の通知等)
第三十三条 都道府県知事は、裁定をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨及び前条第二項各号に掲げる事項を、裁定申請
をした起業者及び当該事業に係る特定所有者不明土地所有者等で知れているものに文書で通知するとともに、公告しなければならない。
・ 法第32条に規定する都道府県知事の裁定に基づく収用による所有権の移転の登記は、起業者が不動産登記法第118条の規定により申請又は嘱託するものとし、不動産登記令第7条第1項第6号・別表の第74の項添付情報欄イに該当するものとして、法第33条の文書の正本のほか、補償金が供託されたことを証する情報(供託書正本)、補償金の払渡しがされた場合にあっては当該払渡しがされたことを証する情報を添付するものとする。
・ 法第32条の規定による裁定についての行政不服審査法に基づく審査請求及び行政事件訴訟法に基づく訴訟に関しては、審査請求及び訴訟についての特例を定める土地収用法第10章は適用されないため、行政不服審査法又は行政事件訴訟法に定めるところによることとなる。
・ 公告の方法は、規則第48条において、公報その他所定の手段により行わなければならないと定めているが、公報以外の「所定の手段」としては、ウェブサイトや新聞紙への掲載が考えられ、公報の代わりにこれらの手段をとることとしても差し支えない。
収用による所有権移転の登記
審査請求及び訴訟
裁定の公告
補償金の供託
反対給付の内容
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第17条第1項
・ 補償金の供託は、原則として、特定所有者不明土地の所有者又は関係人(以下「特定所有者不明土地所有者等」という。)を被供託者として特定所有者不明土地所有者等ごとに1つの供託書により行う。
・ 補償金の供託をした裁定申請者は、速やかに供託書正本の写しを都道府県知事に提出する。
供託書の記載例
土地収用法との関係
【法律】
(裁定の効果)
第三十四条 裁定について前条の規定による公告があったときは、当該裁定に係る特定所有者不明土地について土地収用法第四十八条第一項の権利取得裁決及び同法第四十九条第一項の明渡裁決があったものとみなして、同法第七章の規定を適用する。
(損失の補償に関する土地収用法の準用)
第三十五条 土地収用法第六章第一節(第七十六条、第七十七条後段、第七十八条、第八十一条から第八十三条まで、第八十六条、第八十七条及び第九十条の二から第九十条の四までを除く。)の規定は、裁定に係る特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補償について準用する。この場合において、同法第七十条ただし書中「第八十二条から第八十六条まで」とあるのは「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成三十年法律第四十九号。以下「所有者不明土地法」という。)第三十五条第一項において準用する第八十四条又は第八十五条」と、「収用委員会の裁決」とあるのは「都道府県知事の裁定」と、同法第七十一条中「権利取得裁決」とあり、並びに同法第七十三条、第八十四条第二項及び第八十五条第二項中「明渡裁決」とあるのは「所有者不明土地法第三十二条第一項の裁定」と、同法第八十条
中「前二条」とあるのは「所有者不明土地法第三十五条第一項において準用する前条」と、同法第八十四条第一項中「起業者、土地所有者又は関係人」とあるのは「起業者」と、同項及び同条第二項、同条第三項において準用する同法第八十三条第三項から第六項まで並びに同法第八十五条中「収用委員会」とあるのは「都道府県知事」と、同法第八十四条第二項、同条第三項において準用する同法第八十三条第三項及び同法第八十五条第二項中「裁決を」とあるのは「裁定を」と、同条第一項中「起業者又は物件の所有者」とあるのは「起業者」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
・ 所有者不明土地法による特例は、収用委員会による裁決手続を合理化するものであり、都道府県知事による裁定を受けた後の手続については、土地収用法が定める通常の手続と異なるものはないため、同法第7章の規定を準用することとしている。ただし、裁定に対する審査請求や異議申立については、土地収用法を準用しないため、行政不服審査法・行政事件訴訟法にしたがって行う必要がある。
・ 収用に伴う損失の補償についても土地収用法を準用することとしているが、対象となる土地が所有者不明土地であることに照らし、所有者からの請求に関する規定については、準用の対象外とされている。
土地収用法の準用
土地収用法との関係
【法律】
(土地収用法との調整)
第三十一条 裁定申請に係る特定所有者不明土地については土地収用法第三十九条第一項の規定による裁決の申請をすることができず、同項の規定による裁決の申請に係る特定所有者不明土地については裁定申請をすることができない。
2 裁定申請に係る特定所有者不明土地については、土地収用法第二十九条第一項の規定は、適用しない。
3 裁定申請に係る特定所有者不明土地等については、土地収用法第三十六条第一項の規定にかかわらず、同項の土地調書及び物件調書を作成することを要しない。
4 裁定申請に係る特定所有者不明土地について、第二十八条第一項の規定による公告があるまでの間に土地収用法第三十九条第二項の規定による請求があったときは、当該裁定申請は、なかったものとみなす。
5 裁定申請について第二十八条第一項の規定による公告があったときは、当該裁定申請に係る特定所有者不明土地については、土地収用法第三十九条第二項の規定による請求をすることができない。
6 第二十九条第二項の規定により裁定申請が却下された場合における当該裁定申請に係る特定所有者不明土地についての土地収用法第二十九条第一項及び第三十九条第一項の規定の適用については、これらの規定中「一年以内」とあるのは、「特定期間(当該事業に係る特定所有者不明土地(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成三十年法律第四十九号)第二条第二項に規定する特定所有者不明土地をいう。)について同法第二十七条第一項の規定による裁定の申請があつた日から同法第二十九条第二項の規定による処分に係る同条第三項の規定による通知があつた日までの期間をいう。)を除いて一年以内」とする。
・ 土地収用法が定める手続と本法が定める特例との関係について、法第31条において、以下のような調整規定が設けられている。
・ 土地収用法の裁決手続と本法の裁定手続は同時に行うことができない(第1項)
・ 裁定申請中の土地については、土地収用法第29条第1項が定める事業認定の失効の規定は適用されない(第2項)
・ 裁定申請に係る土地については、土地調書・物件調書の作成は不要(第3項)
・ 裁定申請について、その公告前に土地収用法第39条第2項に定める裁決申請請求があった場合は、裁定申請はなかったものと見なされ、その公告後には裁決申請請求を行うことはできない(第4項・第5項)
・ 異議申出により裁決申請が却下された場合には、土地収用法が定める裁決申請期限は延長される(第6項)
土地収用法との調整
【参考】 事業認定に係る相談窓口を活用してください
「使えない」・「使いづらい」と思われている収用から必要に応じて活用できる収用へ
○収用制度は公共の利益の増進と私有財産との調整を図る手続であり的確な運用が必要であるが、「使えない」・「使いづらい」と思われていることから必ずしも十分な活用が図られていない。このため、事業認定の円滑化のための施策を講じ、収用制度の計画的な活用を促進する。
○ 平成30年4月2日 : 国土交通省土地収用管理室(以下「本省」という。)に相談窓口の体制を整備
○ 平成30年6月12日 : 事業認定申請の手引きを公表、各地方整備局等に相談窓口の体制を整備
○ 令和元年6月17日: 事業認定申請の手引き(第2版)公表
【相談・回答例】
○全体計画区間・起業地区間の考え方、事業の公益性の説明方法、添付すべき
書類の作成方法等について幅広く助言している。
○起業者(市)から本省に対し、事業認定庁(県)との相談結果を確認したい旨の相談があるなど、本省相談窓口では、自らが事業認定庁とならない事業を施行
する起業者からの相談も幅広く受け付けている。
○相談窓口一覧は以下のURLから確認可能。 事業認定 相談窓口 検索
( http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/land_expropriation/sosei_land_fr_000463.html )
(各地方整備局等含む)
【参考】 「事業認定申請の手引き」の改訂について
【改訂の方針】
相談窓口、アンケート調査等で把握した新たなニーズ等を踏まえ、さらなる予見可能性の向上と負担軽減を図る。
【改訂の内容】
○事例明示が収用活用を意思決定する上で有効との声を踏まえ、ニーズのある説明事例を大幅に追加(45例→63例)
・サービスエリア等の休憩施設
・路線バスの停車帯
・道路幅員など都市計画と事業計画が一致しない場合
・河川堤防の規格をランクアップする場合 等
○自治体の関心の高い小規模な道路事業(歩道整備、局部的な線形改良等)について、「手引き」の随所にある関連記述をわかりやすく再編集し、そのまま活用できる事業計画書の作成例として紹介
○防災・減災や老朽化対策への活用を見据えた記述を追加
・落石等の災害危険箇所の代替経路となる道路事業の説明事例
・地吹雪等の影響を緩和するための防雪柵を設置する場合の説明事例
・老朽化トンネルの代替経路となる別線トンネル事業の説明事例
・がけ崩れの復旧事業に際して、所有者不明土地がある場合に有益な不在者財産管理制度の活用について
・非常災害時の緊急使用制度(法第122条)の解説
「事業認定申請の手引き」の効果
○「事業認定申請の手引き」(以下「手引き」という。)について、
便利だという意見が多数寄せられた
○事業認定件数(本省)が1.5倍に増加(12件→18件)
○これまで収用活用が難しいと誤解されていた砂防事業等について、
具体的な活用の動きが出てきた
「手引き」の改訂内容
※平成30年上期(1~6月)→令和元年上期(1~6月)(30年度申請済み案件を含む。)
被災履歴のない砂防事業に関し、「土砂災害の危険性」の説明については、土砂災害警戒区域に指定されていることを用いても説明できることを「手引き」で提示。
土砂災害警戒区域