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2024年06月06日
宅地建物取引業者の説明義務2 第2章 本人確認

第2章 本人確認

 

最判昭和36年5月26日民集15巻5号1440頁

宅地建物取引業者は、直接の委託関係はなくても、業者の介入に信頼して取引するに至った第三者に対して、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務がある。

上告趣意は、不動産取引業者は委託関係のない第三者に対してまで当然に業務上の義務を負うものではないとの見解を前提として原判示を攻撃するものである。しかし原判決は、必ずしも取引業者の注意義務を一般第三者のすべてに対して肯定したのではなく、上告人が不動産仲介業者として本件貸地を同業者Aに紹介したに止まらず、訴外Bを真実の地主Cであるとして被上告人に紹介面接させ、契約書にも立会人として署名捺印して、被上告人をして右Bを地主Cであると誤信させたこと等を確定した上で、不動産仲介業者は、直接の委託関係はなくても、これら業者の介入に信頼して取引をなすに至った第三者一般に対しても、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があるとしているのであって、右判断は正当である。

 控訴審である東京高判昭和32年11月29日民集15巻5号1450頁によれば、事実関係は、以下のとおりです。

(一) 訴外平野は、印鑑証明書等を偽造し前示他人の土地を賃貸して権利金名義の下に金員を扁取せんことを企て、先ず東京法務局杉並出張所において登記簿上右土地の所有者が山形市在住の尾関謙一郎であることを確かめ、右土地の登記簿謄本の下附を受け、次いで共謀者の一人である訴外某をして東京都杉並区長作成名義の尾関の印鑑証明書を偽造せしめ、更に右土地の周囲を杭で囲い尾関の所有なることを表示した上、右所有者尾関を装い昭和二十九年十月中旬頃不動産仲介業者である第一審被告伊藤に対し該土地の賃貸方の仲介を申込んだ。

 (二) 第一審被告伊藤は右申込にもとずき現場を見分し、且つ杉並登記所同税務事務所等において担保権賃借権等の設定のないことを確かめた上、同業者である第一審被告佐々木に紹介した。ところが第一審被告伊藤はその頃同業者である和光土地建物にも借主のあっせんを依頼した関係もあってその要請にもとずき、その使用人である近藤を伴い地主尾関の止宿先であるという東京都杉並区西荻窪の中村某方を探索訪問したところ、尾関なる者は居住していないとのことで、当時尾関が同所に居住している点について別に確証は得られなかった。

  (三) 一方その頃第一審原告から土地賃借の仲介の委託を受けた第一審被告佐々本は、昭和二十九年十一月二十日頃第一審原告と一諸に第一審被告伊藤の紹介で土地所有者尾関の氏名を詐称していた平野と面接会合した。その際第一審被告等は、右平野から尾関名義の印鑑証明書、勤務先桧社の身分証明書(以上いずれも偽造)、前示土地の登記簿謄本、現場図面の提示を受けたが、尾関が昭和二年に本件土地の所有権を取得した旨の登記簿の記載から推して同人を相当年配と想像していたのに、予期に反し四十歳位と見受けられたので代理人かと問いただしたところ、同人の幼少時代に同人名義で父から買って貰ったという巧妙な言逃れの返事があったのを軽信し、また前示土地所有者尾関の住所は登記簿上は山形市鉄砲町百十五番地と八っているのに、前示印鑑証明書によると東京都杉並区西荻窪三丁目三十八番地とあって両者の記載に差異があり、殊に第一審被告伊藤としてはさきに認定したとおり、尾関と称する者が右印鑑証明書記載の現住所に居住しているかどうかを確知できなかったことを知っていた筈であるのに、何故か敢えてこれに触れず、両被告共それ以上権利証の提示を求めたり、住民登録票等について果して右尾関と称する者が真実の所有者であるかどうかを確める措置に出でず(後日調査の結果印鑑証明書記載の住所に尾関の住民登録がなされていないことが判明したのである。)そのまま同人が右土地所有者本人であると速断して第一審原告に紹介し、第一審被告伊藤淳司は該土地の賃貸人側の元付業者として、第一審被告佐々木喬は賃借人たる第一審原告から委託を受けた客付業者として、夫々右契約書に立会人の意味で記名または署名捺印し、以て第一審原告に対し夫々尾関と称する者が本件土地の真の所有者であるという趣旨のことを表明したので、第一審原告もこれを誤信し右尾関と称する者即ち平野との間に前示土地につき賃貸借契約を締結し、仲介者たる第一審被告佐々木の手を通じ前示権利金内金五万円、次いで同月二十二日二十五万円合計三十万円の授受がなされたものである。

 すなわち、①登記簿住所との相違、②年齢の相違、③現住所とされる場所に居住していないことを知っていたことから、過失が認定されました。

 

東京地判昭和34年12月16日判タ102号49頁

 本件についてこれを見るに、仲介業者の従業員らは、地主諸貫に全く面識がなく、その上自称諸貫こと永井は当時権利証を紛失したと称し、保証書を呈示しているのであるから、このような場合、自称諸貫が真実に地主諸貫であるか否かの点について特別に注意を払い、地主諸貫の居宅または勤務先などに電話で連絡するとか、または同所に行ってこれを確認するなどの調査をなすべきところ、これを怠り、前記認定した程度の調査をもって、自称諸貫を地主諸貫であると誤信して、この旨を原告に告知し、もって本件土地の売買の仲介をしたことは、鶴賀及び野本らの過失であり、不法行為として右によって原告の蒙った損害を賠償する義務がある。

 また被告遠藤は、前記損害賠償の額の認定につき、過失相殺を主張しているが、原告本人尋問の結果によれば、原告は本件土地の売買をなすについて、専ら不動産仲介業者として被告遠藤の有する不動産取引に関する智識、経験並びにその調査を信頼して本件取引の仲介を依頼したことが認められるのであって、原告が買主として自ら権利者の真偽について調査しなかったとしても、これをもって、原告の過失であるということはできない。よってこの点に関する被告の過失相殺の抗弁は理由がない。

 

神戸地尼崎支判昭和63年2月25日判時1299号117頁

1 他人の土地の売買につき所有権の確認を求める別件訴訟の相手方と和解を行った買主の売主に対する担保責任の主張立証型

2 売主に対する瑕疵担保責任が肯定されたが、他人の土地がなぜ生じたのか明らかではないため、売買の仲介業者の注意義務違反を否定した事例

 

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