パワーハラスメントの定義・現状
1 定義
パワーハラスメントとは、①職場における優位性を背景に、②業務の適正な範囲を超えて、③身体的・精神的な苦痛を与えること、または、就業環境を害することをいいます。
パワハラ防止の法的義務
労働施策総合推進法の正式名称は、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
昭和41年法律第132号
です。
労働施策総合推進法の改正 (パワハラ防止対策義務化)について 職場におけるパワーハラスメント対策が 令和2年6月1日から大企業の法的義務になります。
根拠条文は、同法「第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」であり、30条の2,30条の3です。
パワハラの定義は、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」です(30条の2)。
2 現状
労働局における総合労働相談において、2012年~2017年において、相談件数はトップ、約3割をしめる。
3 提言・通達
パワーハラスメントは、 使用者の労働者に対する安全配慮義務違反または不法行為となります。
平成24年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言 」(以下「提言」といいます。)が厚生労働省によって取りまとめられました。提言の中では、 定義や類型について、 以下のように取りまとめられました。
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、 業務の適正な範囲を超えて、 精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為と定義をしました。
職場のパワーハラスメントは、①身体的な攻撃(暴行、傷害)、②精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なこと・遂行不可能なことの強制、 仕事の妨害)⑤過小な要求(業務上の合理性なく、 能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) が典型例です。
なお、パワーハラスメントが退職勧奨の一環としてなされる場合がありますが、本稿は退職勧奨を扱うことを目的としておりませんので、必要な限度で言及するにとどめます。