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2024年06月08日
神戸市住民訴訟事件・市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,市長に過失があるとはいえないとされた事例

神戸市住民訴訟事件・市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,市長に過失があるとはいえないとされた事例

 

 

神戸市外郭団体派遣職員への人件費違法支出損害賠償等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成22年(行ヒ)第102号

【判決日付】      平成24年4月20日

【判示事項】      1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,市長に過失があるとはいえないとされた事例

             2 普通地方公共団体が条例により債権の放棄をする場合におけるその長による放棄の意思表示の要否

             3 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の不当利得返還請求権を放棄する旨の議会の議決の適法性及び当該放棄の有効性に関する判断基準

             4 住民訴訟の係属中にされたその請求に係る市の不当利得返還請求権を放棄する旨の条例の制定に係る市議会の議決が適法であり,当該放棄が有効であるとされた事例

【判決要旨】      1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,次の(1)~(4)など判示の事情の下では,市長に過失があるとはいえない。

             (1) 同法は,地方公共団体が上記団体に支出した補助金等が上記職員の給与に充てられることを禁止する旨の明文の規定は置いていない。

             (2) 同法の制定の際の国会審議において,地方公共団体が営利法人に支出した補助金が当該法人に派遣された職員の給与に充てられることの許否は公益上の必要性等に係る当該地方公共団体の判断による旨の自治政務次官の答弁がされていた。

             (3) 同法の制定後,総務省の担当者も,上記団体における上記職員の給与に充てる補助金の支出の適否は同法の適用関係とは別途に判断される旨を上記市や他の地方公共団体の職員に対して説明していた。

             (4) 法人等に派遣された職員の給与に充てる補助金の支出の適法性に関し,同法の施行前に支出された事例については裁判例の判断が分かれており,同法の施行後に支出がされた事例については同法と上記支出の関係について直接判断した裁判例はいまだ現れていなかった。

             2 普通地方公共団体が条例により債権の放棄をする場合には,その長による公布を経た当該条例の施行により放棄の効力が生じ,その長による別途の意思表示を要しない。

             3 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の不当利得返還請求権を放棄する旨の議会の議決がされた場合において,当該請求権の発生原因である公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響(その違法事由の性格や当該支出等を受けた者の帰責性等を含む。),当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有無及び経緯,事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であってその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となる。

             4 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことが違法であるとして提起された住民訴訟の係属中に,その請求に係る市の当該各団体に対する不当利得返還請求権を放棄する旨の条例が制定された場合において,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,その制定に係る市議会の議決はその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえず適法であり,当該放棄は有効である。

             (1) 当該請求権の発生原因である補助金又は委託料の支出に係る違法事由は,当該各団体における上記職員の給与等に充てる公金の支出の適否に関する同法の解釈に係るものであり,当該各団体においてその支出の当時これが同法の規定又はその趣旨に違反するものであるとの認識に容易に至ることができる状況にはなかった。

             (2) 当該各団体には,不法な利得を図るなどの目的はなく,補助金又は委託料の支出という給与等の支給方法の選択に自ら関与したなどの事情もうかがわれない。

             (3) 当該各団体の活動を通じて医療,福祉,文化,産業振興,防災対策,住宅供給,都市環境整備,高齢者失業対策等の各種サービスの提供という形で住民に相応の利益が還元されており,当該各団体が不法な利益を得たものということはできない。

             (4) 上記条例全体の趣旨は,上記住民訴訟における第1審判決の判断を尊重し,同法の趣旨に沿った透明性の高い給与の支給方法を採択したものといえ,上記条例に係る議会での審議の過程では,上記補助金及び委託料の返還を直ちに余儀なくされることによって当該各団体の財政運営に支障が生ずる事態を回避すべき要請も考慮した議論がされている上,上記補助金及び委託料に係る不当利得返還請求権の放棄によって市の財政に及ぶ影響は限定的なものにとどまる。

             (5) 上記住民訴訟を契機に,市から法人等に派遣される職員への給与の支給に関する条例の改正が行われ,以後,市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体において市の補助金又は委託料を上記職員の給与等に充てることがなくなるという是正措置が既に採られている。

             (3,4につき補足意見がある。)

【参照条文】      公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平18法50号改正前)2-1

             公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律6-1

             公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律6-2

             公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律10-1

           公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平13神戸市条例49号。平21神戸市条例28号改正前)2-1

           公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平13神戸市条例49号。平21神戸市条例28号改正前)4

           公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平13神戸市条例49号。平21神戸市条例28号改正前)10

             地方自治法16-2

             地方自治法96-1

             地方自治法242の2-1

             平21神戸市条例28号附則5

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集66巻6号2583頁

 

 

第1 事案の概要

 1 本件は,普通地方公共団体の長等に対する損害賠償請求や第三者に対する不当利得返還請求の義務付けを求める地方自治法242条の2第1項4号所定のいわゆる4号訴訟の提起後,事実審口頭弁論終結前に,当該請求に係る債権を放棄する旨の議会の議決ないし条例の制定がされた場合(以下単に「放棄議決」という。)のその適法性等が争点となった事案である。本件は,普通地方公共団体が有する不当利得返還請求権等が放棄の対象となったものであり,本判決の直後に言い渡された最二小判平24.4.23民集66巻6号2789頁,判タ1383号137頁(さくら市債権放棄議決事件)は,普通地方公共団体が有する損害賠償請求権が放棄の対象となったものである。

 2 本件は,神戸市の住民である原告(被控訴人,被上告人兼相手方)らが,神戸市が職員を派遣しているいわゆる外郭団体に対する補助金や委託料の支出が派遣職員の人件費に充てられていることが,「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」(以下「派遣法」という。)を潜脱するもので違法,無効であるとして,被告(控訴人,上告人兼申立人)を相手として,①当時の市長に対する損害賠償請求と②当該団体に対する不当利得返還請求をすることの義務付けを求める住民訴訟(4号訴訟)である。

 派遣法は,地方公共団体が派遣職員について一定の要件の下で直接給与を支給する方法を定めているが,本件のように地方公共団体が直接給与を支給する形ではなく,地方公共団体が当該団体に補助金や委託料を支給し,当該団体の方でその補助金や委託料を派遣職員の人件費に充当することが違法,無効であるかどうかについては,明らかではなかった。

 第1審(LLI,最高裁HP)は,本件の補助金,委託料の支出を違法,無効とし,市長の過失も認定した上で,原告らの請求を一部認容した。

 これに対し,被告が控訴し,原告らも附帯控訴し,原審がいったん弁論を終結した後,神戸市議会において,本件請求権を含む市長に対する損害賠償請求権及び各団体に対する不当利得返還請求権を放棄する旨の条例を制定し,その条例が公布された。被告が,再開された弁論において上記放棄による債権の消滅を主張したところ,原審(LLI,最高裁HP)は,上記条例の公布施行のみでは放棄の効力は生じないし,さらに,上記条例に係る神戸市議会の議決は,住民訴訟の制度を根底から否定するものであって議決権の濫用に当たり違法,無効であるとし,55億円余りにも上る損害賠償請求及び不当利得返還請求の義務付けを認容した。原判決は,全国紙で新聞報道されるなど大きな社会的反響があった。これに対し,被告が上告及び上告受理申立てをした。

第2 判決

 最高裁第二小法廷は,上告受理申立ての一部(首長の過失,放棄の有効性)を受理した上で,原判決を破棄し,①市長個人に対する損害賠償請求については,その過失を認めることはできないとしてこれを棄却し,②各団体に対する不当利得返還請求については,それを放棄する条例に係る議決の適法性についての判断枠組みを示した上で,本件事案においてこれを当てはめた上で放棄議決の適法性を認めて請求権が消滅したとしてこれを棄却する判決をした。

 

 

 

公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律

(職員の派遣)

第二条 任命権者(地方公務員法第六条第一項に規定する任命権者及びその委任を受けた者をいう。以下同じ。)は、次に掲げる団体のうち、その業務の全部又は一部が当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるもの(以下この項及び第三項において「公益的法人等」という。)との間の取決めに基づき、当該公益的法人等の業務にその役職員として専ら従事させるため、条例で定めるところにより、職員(条例で定める職員を除く。)を派遣することができる。

一 一般社団法人又は一般財団法人

二 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第八条第一項第五号に規定する一般地方独立行政法人

三 特別の法律により設立された法人(前号に掲げるもの及び営利を目的とするものを除く。)で政令で定めるもの

四 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十三条の三第一項に規定する連合組織で同項の規定による届出をしたもの

2 任命権者は、前項の規定による職員の派遣(以下「職員派遣」という。)の実施に当たっては、あらかじめ、当該職員に同項の取決めの内容を明示し、その同意を得なければならない。

3 第一項の取決めにおいては、当該職員派遣に係る職員の職員派遣を受ける公益的法人等(以下「派遣先団体」という。)における報酬その他の勤務条件及び当該派遣先団体において従事すべき業務、当該職員の職員派遣の期間、当該職員の職務への復帰に関する事項その他職員派遣に当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとする。

4 前項の規定により第一項の取決めで定める職員派遣に係る職員の派遣先団体において従事すべき業務は、当該派遣先団体の主たる業務が地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務である場合を除き、地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務を主たる内容とするものでなければならない。

 

(派遣職員の給与)

第六条 派遣職員には、その職員派遣の期間中、給与を支給しない。

2 派遣職員が派遣先団体において従事する業務が地方公共団体の委託を受けて行う業務、地方公共団体と共同して行う業務若しくは地方公共団体の事務若しくは事業を補完し若しくは支援すると認められる業務であってその実施により地方公共団体の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施が図られると認められるものである場合又はこれらの業務が派遣先団体の主たる業務である場合には、地方公共団体は、前項の規定にかかわらず、派遣職員に対して、その職員派遣の期間中、条例で定めるところにより、給与を支給することができる。

 

(特定法人の業務に従事するために退職した者の採用)

第十条 任命権者と特定法人(当該地方公共団体が出資している株式会社のうち、その業務の全部又は一部が地域の振興、住民の生活の向上その他公益の増進に寄与するとともに当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるものをいう。以下同じ。)との間で締結された取決めに定められた内容に従って当該特定法人の業務に従事するよう求める任命権者の要請に応じて職員(条例で定める職員を除く。)が退職し、引き続き当該特定法人の役職員として在職した後、当該取決めで定める当該特定法人において業務に従事すべき期間が満了した場合又はその者が当該特定法人の役職員の地位を失った場合その他の条例で定める場合には、地方公務員法第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当する場合(同条の条例で定める場合を除く。)その他条例で定める場合を除き、その者が退職した時就いていた職又はこれに相当する職に係る任命権者は、当該特定法人の役職員としての在職に引き続き、その者を職員として採用するものとする。

2 前項の取決めにおいては、同項の要請に応じて退職し引き続き当該特定法人に在職する者(以下「退職派遣者」という。)の当該特定法人における報酬その他の勤務条件並びに当該特定法人において従事すべき業務及び業務に従事すべき期間、同項の規定による当該退職派遣者の採用に関する事項その他当該退職派遣者が当該特定法人の業務に従事するに当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとする。

3 前項の規定により第一項の取決めで定める退職派遣者の特定法人において従事すべき業務は、当該特定法人の主たる業務が地域の振興、住民の生活の向上その他公益の増進に寄与し、かつ、地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務(以下この項において「公益寄与業務」という。)である場合を除き、公益寄与業務を主たる内容とするものでなければならない。

4 第二項の規定により第一項の取決めで定める退職派遣者の特定法人において業務に従事すべき期間は、同項の要請に応じて退職をする日の翌日から起算して三年を超えない範囲内で定めるものとする。

5 第一項の規定による採用については、地方公務員法第二十二条の規定は、適用しない。

 

 

地方自治法

第十六条 普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から三日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない。

② 普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付を受けた場合は、その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない。

③ 条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。

④ 当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。

⑤ 前二項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する。但し、法令又は条例に特別の定があるときは、この限りでない。

 

第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。

一 条例を設け又は改廃すること。

二 予算を定めること。

三 決算を認定すること。

四 法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。

五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。

六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。

七 不動産を信託すること。

八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。

九 負担付きの寄附又は贈与を受けること。

十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること。

十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること。

十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。

十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。

十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整に関すること。

十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項

② 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。

 

(住民訴訟)

第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。

一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求

二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求

三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求

四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求

2 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間内に提起しなければならない。

一 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合 当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内

二 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合 当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内

三 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行わない場合 当該六十日を経過した日から三十日以内

四 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合 当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内

3 前項の期間は、不変期間とする。

4 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。

5 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

6 第一項第一号の規定による請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。

7 第一項第四号の規定による訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。

8 前項の訴訟告知があつたときは、第一項第四号の規定による訴訟が終了した日から六月を経過するまでの間は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効は、完成しない。

9 民法第百五十三条第二項の規定は、前項の規定による時効の完成猶予について準用する。

10 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

11 第二項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条の規定の適用があるものとする。

12 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士、弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

 

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