第5章 担保権の負担
大阪地判昭和57年9月22日判タ486号109頁
1、不動産仲介業者が不動産売買の仲介をするに当り、抵当権の種類、内容の調査等を怠ったとして、仲介契約上の債務不履行責任が認められた事例
2、右の場合、依頼者にも、抵当権の内容等について不動産仲介業者の言のみを信じた点等において、損害の発生および拡大に関して過失があるとして5割の過失相殺が認められた事例
東京地判平成8年7月12日判タ926号197頁
1 宅地建物取引業者が土地売買の仲介をするに当たり、当該土地の権利関係についての調査説明義務違反があったとして債務不履行責任が認められた事例
2 売主からの要求のまま、土地の登記等を確認せずに売買代金を支払った買主にも過失があるとして、5割を過失相殺した事例
Xは、宅地建物取引業者Yの仲介でAから土地を購入し売買代金をすべて支払ったが、右売買契約と残代金支払との間に、当該土地にAを債務者、第三者Bを債権者とする根抵当権設定登記が経由されていたことが後日判明した。
そこで、Xは、Yが登記簿等の調査義務を尽くし、Xに右根抵当権設定登記の存在の事実について説明しておれば、Xは残代金の支払をせずに済んだとし、Yには宅地建物取引業者として仲介の相手であるXに対して信義則上要求される調査説明義務違反があるとして、債務不履行による損害賠償を求めた。
本判決は、Aは転売目的で土地を購入する際、Bから購入資金の融資を受け、購入した土地にBのために根抵当権を設定して根抵当権設定登記を経由し、その後、当該不動産を転売して得た代金から右融資金を返済して、その根抵当権設定登記を抹消するという方法を採っていたこと、XがAと土地売買契約を結んだ際、当該土地はいまだ第三者Cの所有名義であり、その後、本件土地について、CからAへの所有権移転登記がされたが、同日にBのための根抵当権設定登記もされたこと、Aは、Xから本件売買代金全額を受け取ったにもかかわらず、Bに対し本件土地購入資金の返済を終えないまま倒産したことを認定した上、宅地建物取引業者は、不動産の売買等の取引に関し専門の知識経験を有する者として信頼され、その介入によって取引に過誤のないことを期待されており、委託を受けた相手方に対し、準委任関係に立ち、善良な管理者として、目的不動産の瑕疵、権利者の真偽等につき格段の注意をもって取引上の過誤による不測の損害を生じさせないように配慮すべき高度な注意義務がある旨判示し、Aは本件土地の登記簿を全く閲覧していないなど、本件不動産の権利関係に注意して委託者であるXに取引上の過誤による不測の損害を生じさせないように配慮すべき義務を果たしておらず、その結果Xは損害を被ったと判断したが、Xにも、売主であるAにいわれるまま登記等を確認せず売買残代金を支払った過失があるとして、5割の過失相殺をした。