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2024年06月12日
会社の代表取締役らの嫌がらせやいじめ,退職強要等によってうつ病を発病したと主張して,労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付の支給が認められた事例~国・さいたま労働基準監督署長(ビジュアルビジョン)事件

会社の代表取締役らの嫌がらせやいじめ,退職強要等によってうつ病を発病したと主張して,労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付の支給が認められた事例~国・さいたま労働基準監督署長(ビジュアルビジョン)事件

 

東京地方裁判所判決平成30年5月25日

労災補償不支給処分取消請求事件

国・さいたま労働基準監督署長(ビジュアルビジョン)事件

【判示事項】 1 「ストレス-脆弱性理論」に依拠して最新の医学的知見を踏まえて策定されたものである認定基準は,行政庁内部の通達にすぎず法的な拘束力までは認められないとしても,その内容には合理性があるものと認められるから,認定基準の定める要件に該当すれば,より科学的・合理的な知見との抵触があるなどの特段の事情がない限り,業務起因性が認められると解するのが相当であるとされた例

2 「ストレス-脆弱性理論」の趣旨および社会的実態・要請等に照らすと,業務の危険性の判断は,原告Xと同種の平均的労働者,すなわち,何らかの個体側の脆弱性を有しながらも,Xと職種,職場における立場,経験等の社会通念上合理的な属性と認められる諸要素の点で同種の者であって,特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準として,当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷が一般に精神障害を発症させる危険性を有するかを検討し,当該業務による負荷が当該精神障害を発病させたと認められれば,業務に内在し,または随伴する危険性が実現したとして,業務と精神障害発病との間に相当因果関係が認められると解するのが相当であるとされた例

3 A1代表のXに対する退職強要等は,Xが真意ではなくA1代表に退職を申し出たことがきっかけであり,Xは以前にも同様に退職を申し出たことがあったことからすれば,A1代表がXに対して反省を促すことには業務上の理由が認められるが,Xは,多人数が参加する会議等において退職申出の撤回を拒否されたうえ,土下座でもしなければ退職を余儀なくされるという追い詰められた心理状態に置かれたとみることができ,これは認定基準別表1の出来事の類型「役割・地位の変化等」のうち具体的出来事の項目20「退職を強要された」に当たり,その心理的負荷の程度は「強」と認めるのが相当であるとされた例

4 Xにプライドが高く直情径行的な面があることは否めないが,しかしながら,Xは,本件疾病発病以前に既往歴やアルコール・薬物等への依存状況はなく,退職をめぐるやり取りの結果A1代表やE課長との人間関係が悪化するまでは,上司や同僚と日常的に衝突していたことを窺わせる事情は認められず,むしろ良好な関係を築いていたことからすれば,その性格傾向によって通常の業務に支障が生ずるようなことはなかったということができ,Xは平均的な労働者の範疇に入るということができるとされた例

【掲載誌】  労働判例1190号23頁

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