第16章 私道・境界
大阪高判昭和61年11月18日判タ642号204頁
不動産仲介業者に私道通行承諾書の交付、境界明示の義務があるとされた事例
本件事案の概要
(1)Aは他から買入れた土地を本件土地と西側隣地に分筆し、西側隣地をBに売渡した。
(2)Bはその後Aに対し本件土地が西側隣地にくい込んでいるとして再測量を申入れたが互いに両土地を自己の側で買取るとの提案をし合う(交叉申込)にとどまった。
(3)Aの代理人Mは不動産仲介業者であるY1(被告・被控訴人)に本件土地と地上の本件建物(古家)の売却の仲介を依頼した。
(4)Y1のほかY2、Y3、Y4はいずれも仲介業者として本件土地建物の売買仲介をし「私道の通行承諾は売主が書類にしてもらいます」と記載した売主側の売却条件リストを買主であるX(原告・控訴人)に手交した。
(5)Xに対しYら自身も仲介業者として売主と共に境界確定と境界標の打込み、私有地通行承諾書のとりつけを了承したうえ、売主代理人Mとの間で売買契約を成立させた。
(6)Y1、Y2はMと共に境界標を打ったが、MがBから委されているとの嘘を鵜呑みにしてBの立会なしに行なったものでBの関知するところでなかった。
(7)XはY1持参の通行承諾書の交付をうけ残代金を決済したが、これは偽造であった。
(8)XはBらから境界、通行承諾書の偽造など異議通告をうけ、その解決金支払などの損害を蒙ったため、Yら不動産仲介人に対し損害賠償の本訴提起。
神戸地裁はXの請求を棄却。
X控訴。