第5章 ①審判口頭審理のオンライン化
1.新旧対照表
改正される条文:特許法145条6項、7項
特許法145条6項
(新設)
審判長は、当事者もししくは参加人の申立てにより・または職権で、経済産業省令で定めるところにより、審判官および審判書記官ならびに当事者および参加人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、第三項の期日における手続を行うことができる。
特許法145条7項
(新設)
第三項の期日に出頭しないで前項の手続に関与した当事者および参加人は、その期日に出頭したものとみなす。
2.施行期日
令和3年10月1日
3.改正法の概要等
特許法では、特許無効審判および延長登録無効審判は、口頭審理によるものとされており(特許法145条1項)、また、拒絶査定不服審判および訂正審判は書面審理によるとされていますが、審判長は、当事者の申立てにより・または職権で、口頭審理によるものとすることができるとされています(同条2項)。
しかしながら、当事者等が新型コロナウイルス感染症に対する不安を持つことなく口頭審理に参加できるようにするという観点およびデジタル化等の社会構造の変化に対応しユーザーの利便性を向上させる観点からは、当事者等が審判廷に出頭することなく、口頭審理の期日における手続に関与できるようにすることが望まれていました。
そこで、ウェブ会議システムにより口頭審理に参加できるようにする改正が行われました(特許法145条6項、7項)。審判長は、ウェブ会議システムによる手続を行うときは、当該手続に必要な装置、通話先の場所その他当該手続の円滑な進行のために必要な事項を確認するものとされ、審判長は、装置・または場所が相当でないと認めるときは、当事者・または参加人に対し、その変更を命ずることができるとされています(特許法施行規則51条の2)。
感染症拡大や災害等によって特許料納付期間を経過した際の救済措置(割増特許料の納付免除規定の新設)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ビジネスや消費者向けサービス、接客、飲食など、対面でのコミュニケーションを減らす取り組みが社会のあらゆる領域で行われるようになりました。今回の特許法改正は、そのような変化を受けた手続きの整備といえます。
例えば、審判手続における口頭審理は、これまで審判廷に当事者が出頭する形で行われていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、非接触型で「密」を避ける形の生活様式が浸透する中、対面方式のみの審判は難しいといえます。
また、企業活動がパンデミックの影響を受ける中で、所定の期間内に特許料を納付できない企業が増えたことが推測されます。今回の特許法改正では、これらの課題の解決が大きな目的の一つとなっています。
また、特許法71条3項および特許法151条において、特許法145条6項および7項が準用されているため、判定の口頭審理における手続、証拠調べおよび証拠保全における手続についても、当事者はウェブ会議システムにより参加することができます。