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2024年07月16日
歯科医院マンション事件・契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例

歯科医院マンション事件・契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和59年(オ)第152号

【判決日付】      昭和59年9月18日

【判示事項】      契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例

【判決要旨】      マンションの購入希望者において、その売却予定者と売買交渉に入り、その交渉過程で歯科医院とするためのスペースについて注文を出したり、レイアウト図を交付するなどしたうえ、電気容量の不足を指摘し、売却予定者が容量増加のための設計変更および施工をすることを容認しながら、交渉開始6か月後に自らの都合により契約を結ぶに至らなかったなど原判示のような事情があるときは、購入希望者は、当該契約の準備段階における信義則上の注意義務に違反したものとして、売却予定者が右設計変更および施工をしたために被った損害を賠償する責任を負う。

【参照条文】      民法1-2

             民法415

             民法3編2章1節1款

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事142号311頁

             判例タイムズ542号200頁

             金融・商事判例711号42頁

             判例時報1137号51頁

 

 

事案の概要

 1 本件は、マンションの売主であるXが、買受希望者であるYの希望によつて設計変更をしたのに売買が不成立になったため、Yに対し契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由として損害賠償を請求した事案である。

 一、二審とも、Xの請求を一部認容したので、Yから上告された。

 2 事実関係の概要は、(1)Xは、4階建分譲マンションを建築することを計画し、着工と同時に買受人の募集を始めたところ、昭和54年11月Yから買受け希望があつて交渉した結果、Yはなお検討するので結論を待つて貰いたいと述べ、1月後にXに10万円を支払つた。

その間YはXにスペースについて注文を出したり、レイアウト図を交付するなどした。

(2)その後、Yから歯科医院を営むため電気を大量に使用することになるが、マソションの電気容量はどうなつているかとの問合わせがあつたので、Xは、電気容量が不足であると考え、Yの意向を確かめないまま受水槽を変電室に変更するよう指示したうえ、翌55年2月Yに対し電気容量変更契約をしてきたことを告げ、これに伴う出費分を上乗せすることを述べたが、Yはとくに異議を述べなかった。

(3)Yは、その後、Xに対し、購入資金の借り入れ申込の必要書類として見積書の作成を依頼したが、同年3月下旬頃、結局購入資金の毎月の支払額が多額であることなどを理由に買取りを断つた、というものである。

 

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人伊藤茂昭の上告理由について

 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の契約準備段階における信義則上の注意義務違反を由とする損害賠償責任を肯定した原審の判断は、是認することができ、また、上告人及び被上告人双方の過失割合を各五割とした原審の判断に所論の違法があるとはいえない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づき原判決を論難するか、又は原審の裁量に属する過失割合の判断の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

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