「東京地方裁判所厚生部」のした取引と同裁判所の責任
売掛代金請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和31年(オ)第835号
【判決日付】 昭和35年10月21日
【判示事項】 「東京地方裁判所厚生部」のした取引と同裁判所の責任
【判決要旨】 一般に官庁の部局をあらわす文字である「部」と名付けられ、裁判所庁舎の一部を使用し、現職の職員が事務を執つていた「東京地方裁判所厚生部」は、東京地方裁判所の一部局としての表示力を有するものと認めるべきであり、東京地方裁判所当局が同部の事業の継続処理を認めた以上、これにより同裁判所は、「厚生部」のする取引が自己の取引なるかのごとく見える外形を作り出したものというべく、善意無過失の相手方に対し、「厚生部」のした取引につき自ら責に任ずべきである。
(少数意見がある。)
【参照条文】 民法109
商法23
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集14巻12号2661頁
民法
(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者が行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その為についての責任を負う。
商法
(公法人の商行為)
第二条 公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、この法律の定めるところによる。
(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)
第十四条 自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。