第12章 今回改正が見送られた事項
令和3年特許法改正において、改正が見送られた事項として、輸入の定義の明確化があります。
令和3年の意匠法および商標法の改正では、「輸入」に「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為」が含まれることが明記され、例えば、外国の事業者が、通販サイトで受注した商品を購入者に届けるため、郵送等により日本国内に持ち込ませる行為が意匠法および商標法の規制対象となり得ることが明確化されました(令和3年改正意匠法2条2項1号、令和3年改正商標法2条7項)。これにより、個人が、模倣品等を個人的に使用する目的で輸入する場合であっても、「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為」に該当する場合には、意匠法および商標法の規制対象とすることができるようになりました。
特許法で同様の改正を行う必要性について、経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会の知的財産分科会特許制度小委員会で議論されたものの、この点については「特許法等の解釈にかかる判例・学説の進展や今後の税関における特許権侵害品および実用新案権侵害品の差止状況等を注視した上で、引き続き議論を深めていくことが適当である。」と結論づけられ(同委員会報告書「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方」(令和3年2月)51頁参照)、令和3年特許法改正ではこのような改正はなされませんでした。
そのため、今後の特許法改正において、「輸入」の概念の明確化が行われるかどうかが注目されます。
参考文献:
特許庁「令和3年法律改正(令和3年法律第42号)解説書」(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/2022/2022-42kaisetsu.html)