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新着情報
2019年12月06日
広井 良典『人口減少社会のデザイン』東洋経済新報社2019年

内容紹介
「都市集中型」か、「地方分散型」か。
東京一極集中・地方衰退→格差拡大→財政は改善?
地方への人口分散→格差縮小・幸福感増大→財政は悪化?
果たして、第3の道はあるのか。
2050年、日本は持続可能か?
「日立・京都大学ラボ」のAIが導き出した未来シナリオと選択とは。
借金の先送り、格差拡大、社会的孤立の進行・・・…
転換を図るための10の論点と提言。
社会保障や環境、医療、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで
1将来世代への借金のツケ回しを早急に解消
2「人生前半の社会保障」、若い世代への支援強化
3「多極集中」社会の実現と、「歩いて楽しめる」まちづくり
4「都市と農村の持続可能な相互依存」を実現する様々な再分配システムの導入
5企業行動ないし経営理念の軸足は「拡大・成長」から「持続可能性」へ
6「生命」を軸とした「ポスト情報化」分散型社会システムの構想
7 21世紀「グローバル定常型社会」のフロントランナー日本としての発信
8環境・福祉・経済が調和した「持続可能な福祉社会」モデルの実現
【感想】
日立・京都大学がAIを用いた研究というので読んでみた。
高齢化の原因は少子化にあり、結婚したカップルの子供の数が減っていない中、未婚化と晩婚化が少子化の主な原因である。1980年では女性の就業率と出生率に負の相関があったが、2012年には逆に正の相関があり、女性の就業率が高い国の方が出生率も高い。
地方の人口減少の遠因は高度成長期の都市圏への人口集中であり、その意味で高度成長期の負の遺産であること、社会保障にかかる費用をまかなう財源には消費税が1%で2.5兆円税収となるのに対して、所得税の累進課税は数千億円であること、経済発展と平均寿命に一定の段階を過ぎると相関がなくなること、生涯の医療費の約半分は70歳以降でかかること、医療費の配分には、60年前につくられた診療報酬は開業医をモデルとしていたことに原因があることなどは、先行する研究により明らかにされている。

・大都市が繁栄して地方が廃れていくのは、雇用(所得)が大都市にあるからである。著者は、この問題の対策も提言できていない。
・著者の主張する地方再生のために巨額の税金が必要となるが、その金額も示されていないうえ、財源も不明である。大幅な増税が必要となる
・著者は「地方のシャッター商店街を活性化すること」が目標のようだが、地元の住民も寄り付かない商店街に、都会の若者が地方に移住したとしても、行くだろうか。常識で考えても、ありえない。
・都会にもシャッター商店街はあり得るが、都会でシャッター商店街が目立たないのは、土地代・家賃が高いために、すぐに他の用途に転用されるからである。例えば、店舗がダメなら、アパートに転用される。
・医療費は43兆円であり、診療報酬(保険点数)は1点10円であるから、診療報酬を1割下げると4兆円の節税となる。消費税の増税も必要ない。著者は、この程度の対策も提言できない。
・平均年収2000万円、残業時間190時間(過労死ラインは80時間)と言われる医師の過労死・過重労働に対する提言もない。
・AIを活用すれば、街の薬局の薬剤師の大多数は消えて、薬の種類・数え間違いや飲み合わせの間違いは確実に減り、薬代は安くなるというのが私見である。
AIは、推論、イメージ、具体例が苦手と言われる。
結局、AIを用いた研究と言っても、本書を見れば明らかなとおり、所詮この程度である。

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