失火責任法に関する最高裁・高裁の裁判例を網羅しています。
失火責任法の正式名称は、失火ノ責任ニ関スル法律である。
目次
第1部 失火責任法の適用範囲
第1章 消防署職員の消火活動が不十分なため残り火が再燃して火災が発生した場合と失火ノ責任ニ関スル法律の適用の有無
第2章 発火そのものが火薬、ガス類の爆発によるときは「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用はない
第2部 債務不履行との関係
第1章 債務不履行による損害賠償につき「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用があるか
最2小判昭和30年3月25日 民集9巻3号385頁 判例タイムズ48号42頁
損害賠償請求事件
【判示事項】 債務不履行による損害賠償につき「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用があるか
【判決要旨】 債務不履行による損害賠償につき「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用はない。
【参照条文】 民法415
失火ノ責任ニ関スル法律(明治32年法律第40号)
第2章 共同住宅の部屋の賃借人の失火と、債務不履行による損害賠償の範囲
第3部 失火責任法但書の重過失が否定された事例
第1章 1、「失火ノ責任ニ関スル法律」但書にいわゆる「重大ナル過失」の意義
2、失火者に「重大ナル過失」の認められなかった一事例
第2章 1、債務者の失火による損害惹起行為が、不法行為に該当するにとどまり、債務不履行に該当しない事例
2、「失火ノ責任ニ関スル法律」但書の重過失が否定された事例
第3章 電気器具の器具付きコードのプラグと室内の壁面に設置された電気配線のコンセントの接続部分(コネクター)にほこりや湿気がたまることによって生ずるトラッキング現象が出火原因とみられる火災につき、建物の使用者の重過失が否定された事例
第4部 重過失が肯定された例
第1章 ドラム缶を利用して「おが屑」を焼却しているうち飛火したのが原因で発生した火災につき焼却作業に従事していた者の重過失が肯認された事例
第2章 石油ストーブに給油する際、石油ストーブの火を消さずに給油したため、石油ストーブの火がこぼれた石油に着火して発生した火災につき、重過失があったとして不法行為責任が認められた事例
第5部 子供の火遊びと、その両親の監督(民法714条)の重大な過失
第1章 責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合における監督義務者の損害賠償責任と失火の責任に関する法律
第2章 子供の火遊びにより発生した失火事故につき、その両親に重大な監督義務違反があるとして、損害賠償責任を認めた事例
第3章 子供の火遊びにより建物が全焼した事故につき、その両親の監督に重大な過失がなかったとはいえないとして損害賠償責任が認められた事例
第6部 民法715条1項(使用者責任)との関係
第1章 被用者が重大な過失によって火を失したときは、使用者は、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても、民法715条1項によって賠償責任を負う。
第7部 民法717条(工作物責任)との関係
第1章 工作物の設置保存の瑕疵によって火災が発生、拡大した場合と失火の責任
第2章 土地の工作物の保存の瑕疵による火災と「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用される範囲(工作物が火災予防上特に著しい危険性をもつときを除き、積極)
第3章 製パン業者のパン焼機からの出火につき、民法717条の工作物責任を認め、失火責任法の適用を排斥した事例
第8部 船上火災
第1章 1、失火による船舶火災事故において消火に従事中ガス中毒死した船員にも消防用の呼吸具を用いなかった重過失があるとして2分の1の割合による過失相殺を認めた事例
2、被害者の遺族の受取るべき船員保険法所定の遺族年金のすでになされた給付合計額のうち2分の1の過失相殺分を除いたその余の2分の1相当額が代位の対象となるべき損害賠償請求権の範囲となる
第2章 1 国際海上運送をする船舶が公海を航行中に積載貨物(危険物)を原因とする事故が発生し当該船舶及び他の運送品に損害が生じた場合における当該危険物の荷送人の不法行為責任の準拠法
2 国際海上運送をする船舶に積載された貨物が船倉内で化学反応を起こして高熱を発し当該船舶及び他の運送品に損害が生じた場合において、当該貨物につき法令で定められた危険物である旨の分類表示を怠った荷送人の不法行為責任が認められた事例
3 国際海上運送をする船舶に積載された危険物が船倉内で化学反応を起こして高熱を発し当該船舶及び他の運送品に損害が発生した場合において、当該危険物の荷送人の損害賠償責任につき失火責任法の適用がないとされた事例