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2020年01月13日
航空機リース事業を営む組合の組合員が受けた債務免除益の所得区分『平成28年度重要判例解説』租税法4事件

東京高判平成28年2月17日
各所得税更正処分取消等,各更正の請求拒否通知処分取消請求控訴事件
【判示事項】 1 民法上の組合を組成した上で金融機関から金員を借り入れて購入した航空機を航空会社に賃貸する事業を営んでいた者が航空機を売却して当該事業を終了する際に航空機の購入原資の一部となった借入金の一部に係る債務の免除を受けたことによって得た利益が一時所得に該当するとされた事例
2 民法上の組合を組成した上で金融機関から金員を借り入れて購入した航空機を航空会社に賃貸する事業を営んでいた者が航空機を売却して当該事業を終了する際に業務執行者に対して支払うべき手数料に係る債務の免除を受けたことによって得た利益が一時所得に該当するとされた事例
【判決要旨】 1 他の出資者と組合契約を締結して民法上の組合を組成した上,金融機関から金員を借り入れて航空機を購入し,これを航空会社に賃貸する事業を営んでいた者が,航空機を売却して当該事業を終了する際,航空機の購入原資の一部となった借入金の一部に係る債務の免除を受けたことによって得た利益は,上記事業の一環として発生したものであったとしても,航空機の賃貸自体から発生したものではないこと,上記借入金に係るローン契約では,借入金の返済原資を原則として航空機等の組合財産のみに限定し,それ以外の各組合員の財産を返済の原資としないというノン・リコース条項が設けられていたものの,一定の場合に,借入金に係る債務の全部又は一部を当然に免除するというような条項は設けられていなかったこと,そもそも,上記ローン契約に設けられたノン・リコース条項が問題となるということ自体が,事業終了時点で借入金が組合の財産を上回るなどの限定的な場合に発生する可能性があるものにすぎず,しかも,融資を行った銀行が債務免除を行うということは,そのような場合に生じ得る様々な可能性の一つにすぎなかったこと,実際,上記債務免除益も1回限り発生したものであることからすると,上記債務免除益は,一時的,偶発的に発生したものであって,営利を目的とした継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当し,また,組合員は,上記債務免除益の発生原因である債務免除行為を行った銀行に対して,その対価となるような具体的な労務その他の役務の提供はされていないため,上記債務免除益は,労務その他の役務の対価としての性質を有するものということはできないから,一時所得に該当する。
2 他の出資者と組合契約を締結して民法上の組合を組成した上,金融機関から金員を借り入れて航空機を購入し,これを航空会社に賃貸する事業を営んでいた者が,航空機を売却して当該事業を終了する際,当該組合の業務執行者に対して支払うべき手数料に係る債務の免除を受けたことによって得た利益は,組合の業務執行に対する報酬である手数料に係る債務が業務執行者によって免除されたことによって発生した利益であって,その発生原因である免除行為を行った当該業務執行者は,上記航空機を使用収益していたわけではないこと,ある所得がどの所得区分に該当するかは,当該所得が得られた直接的な原因だけでなく,所得の性質や発生の態様及びこれらに関する事実関係も考慮要素に含めて判断するということを前提としたとしても,ある費用が必要経費に該当するか否かという判断と,当該費用に係る債務が免除されたことによる所得がどの所得区分に該当するかという判断は,本来,別々に行われるべきものであり,ある所得が不動産所得の必要経費とされていた費用に係る債務の免除によって発生したものであることをもって直ちに,発生した当該所得が,目的物を使用収益する対価又はこれに代わる性質を有するものであるとはいえないこと,所得税法上,未払であっても債務として確定した費用は,その確定した日の属する年分の必要経費に算入するものとされ(同法37条1項),その一方で,債務免除によって生じる経済的利益は,それが生じた日の属する年分の各種所得の金額の計算上,総収入金額に算入すべき金額に該当するという仕組みがとられていること(同法36条1項)からすると,上記手数料免除益は,支払債務は発生していたが支払はされていなかったという手数料について,所得税法26条2項所定の不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入されていたところ,その後にその支払債務の免除を受けたことによって発生したものであり,計算上は,不動産所得の総収入金額から控除されていた必要経費を減額し,その分,不動産所得を増加させるものという見方もできないわけではないとしても,このような経済的実質の点から上記手数料免除益を不動産所得に該当するものと認めることは租税法律主義の観点から許容することができないから,上記手数料免除益は,不動産所得に該当せず,また,上記手数料免除益は,上記の事業の一環として発生したものであったとしても,航空機の賃貸自体を原因として発生したものではないこと,当該組合の契約では,業務執行者に対する手数料の支払義務が明確に合意されており,その免除を定めた規定はもちろん,手数料に係る債務を担保すべき責任財産の範囲を限定する条項も設けられていなかったことからすると,上記手数料免除益は,組合事業において,組合契約に基づいて当然に発生したものでも,その発生が予定されていたものではなく,むしろ,その発生は予定されておらず,偶発的に発生したものであるから,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当し,組合員は,上記手数料免除益の発生原因である債務免除行為を行った業務執行者に対して,その対価となるような具体的な労務その他の役務の提供をしていないため,上記手数料免除益は,労務その他の役務の対価としての性質を有するものということはできないから,一時所得に該当する。
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 ジュリスト1505号212頁

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