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民事再生
民事再生法は、再建型手続の一般法です。
一般の民事再生手続(個人含む)
会社更生法と違うのは、再生債務者が原則として、手続開始後も経営を継続していく点にある。
債権届出期間内に債権届出をしないと、失権してしまいます。
個人民事再生手続と異なり、負債総額に上限はない。
予納金は高額(数百万円以上)。
東京地裁での再生計画の認可率は、約7割。
1.
まず、民事再生手続の申立からスタートし、申立費用を予納します。経営者にとって最も重要なのは、資金面 での手当てです。
申立費用については、一般的に言って負債総額に比例し、数百万円以上は確保しなければなりません。
また、仮に民事再生開始決定をもらっても、その後の資金繰りに行き詰まるのであれば再生はおぼつかないので、その後の最低半年間程度の資金繰りは必要です。
ただし、金融機関などからの借入金の元利金の返済をしなくても済むから、申立前よりはぐっと楽になります。
しかし、仕入先や下請先などについては従来からの買掛金をいわば踏み倒したままですから、その後の仕入れなどに応じてくれるか、仮に応じてくれるとしても現金決済になる可能性が強いでしょう。他方、売上面 では、従来からの取引先を維持できるかどうかも大きな問題です。公租公課(税金、社会保険料)や従業員の給与については、支払時期を猶予してもらうにしても、優先債権ですから、申立前の分も含めて、支払いをしなければなりません。
また、申立人側で依頼している弁護士や税理士、公認会計士についても、やはり支払いをする必要があります。
再建が成功するかどうかは、通常の企業経営と同様に、金銭的な要素が大きいのです。
筆者がこのように説明すると、ある経営者は「なんだ、結局はお金が必要なんですか。お金があれば、倒産なんかしませんよ。」とおっしゃいました。
しかし、たとえば、債務を一時的に支払いを猶予してもらうなり、あるいは民事再生法によって金融機関からの借入金債務を減免させれば、十分立ち直れる企業も多い筈です。
この点を考慮して、再生計画を練る必要があります。
予納金基準額(東京地方裁判所の例)
負債総額(単位・円) 法人/家族以外の従業員を雇用している事業者 非事業者/家族以外の従業員を雇用していない事業者
5000万未満 200万円 50万円
5000万~1億未満 300万円 80万円
1億〜5億未満 400万円 150万円
5億〜10億未満 500万円 250万円
10億〜50億未満 600万円 400万円
50億〜100億未満 700万円 500万円
100億〜250億未満 900万円  
250億〜500億未満 1000万円  
500億〜1000億未満 1200万円  
1000億〜 1300万円  
  1. 関連会社は一件50万円とし、関連個人は25万円とする。
  2. 申立時に6割、開始決定後2ヶ月以内に4割の分納を認める。
2.
申立費用を予納すると、裁判所から保全処分が発令されます。
保全処分の内容は、弁済禁止、強制執行や担保権実行の中止命令、監督委員を付す監督命令が代表的なものです。
東京地方裁判所など多くの裁判所では、全ての事件について、原則として、従来の経営者に経営権を維持させつつ、監督命令により監督委員を選任する意向です。
例外的に経営者が不適切だと裁判所が判断した場合には、管理命令などにより保全管理人又は管財人が付され、経営者が追放されるケースもあり得るので、注意を要します。
保全処分の後、再生の見込みがないわけではない場合には、裁判所は手続開始決定をします。
「再生の見込みがないわけではない」という回りくどい表現を用いるのは、「再生の見込みがある」場合よりも、間口を広げるためです。
再生の見込みが確実な場合には、保全処分と同時に開始決定がなされる場合もあり、現にそのような実例があります。
再生の見込みがない場合には、申立を棄却する決定がなされ、破産手続へ移行します。
申立から開始決定までの期間は多くの裁判所では約1か月とされています。東京地方裁判所では申立当日に開始決定がなされたという事例もあります。
3.開始決定後
保全処分で監督命令などが出されていない場合にも、開始決定後に、監督命令が出される場合があります。
また、開始決定後に、事業譲渡をすることができます。
開始決定後の手続は大きく分けて、2つの側面があります。
1つは債権の調査及び確定です。もう1つは財産の調査などです。
(1)債権の調査・確定
債権届出は、債権者に対して届出が促され、債権届出期間は約1〜2か月です。
届出を受けた債務者などが債権を調査する期間は約1か月です。
債務者が異議を述べた債権については、裁判所の簡易な査定がなされ、査定により債権が確定する場合もありますし、査定で決着がつかなれば債権確定訴訟へ移行します。
債権が確定すると、この確定した債権額が基準となって、債権者集会などでの議決権の額が決まり、また、配当を受ける債権額も確定します。
(2)財産の調査など
債務者の財産調査も債権調査と並行して行われます。
否認権により債務者の財産から流出した財産を取り戻したりする場合もあります。
相殺禁止は、相殺された債務者の財産を債務者へ戻してもらう作業です。
役員の損害賠償責任の査定は、裁判所の簡易な査定により、倒産に責任のある役員から損害賠償金を得て、債務者の財産を充実させるものです。
なお、担保権の消滅請求は、事業に不可欠な財産が担保権の対象となっている場合に、裁判所の許可を得て、担保物の価格などを支払って、担保権を消滅させる手続です。
(3)再生計画
これらの作業を経て、再生計画案を提出し、債権者集会又は書面決議での決議を経て、可決され、裁判所の認可を受ければ、再生計画が決定されます。
再生計画案が決議で否決された場合、あるいは決議で可決されても裁判所が認可しなかった場合には、破産へ移行する。
申立から再生計画の認可までの期間は、6か月程度が目安とされています。
(4)例外
以上の手続の例外として、再生計画案を事前に提出し、債権者の同意を得た場合には、以下の2つの簡易、迅速な例外が認められます。
債権額の5分の3以上の債権者の同意を得た場合(簡易再生)には、債権調査を省略して、ただちに債権者集会などの決議をすることができます。
再生計画案について全ての債権者の同意を得た場合(同意再生)には、債権調査及び裁判所の認可を経ずに、ただちに認可があったものとみなされ、再生計画が決定されます。
(5)終結決定
監督委員がない場合には、認可決定確定時に、裁判所が終結決定をなし、その後、再生計画が遂行されますが、裁判所の監督を離れます。
監督委員がある場合には、認可後、裁判所の監督の下で再生計画が遂行され、再生計画遂行(完遂)時又は認可後3年経過時に、終結決定がなされます。
認可後3年としたのは、従来の和議において、弁済条件が不履行となるケースは、ほぼ3年以内に生じることが多かったため、この期間は少なくとも裁判所が監督することとしたのです。
管財人が付されている場合には、従来の経営者が排除されているため、計画遂行時又は遂行が確実となった時に終結決定がなされます。
上記のいずれの場合でも、再生計画が完遂する前に終結決定がなされた場合には、従来からの経営者又は再生手続中に新しく経営者となった者が、再生計画を遂行することとなります。
また、いずれの場合でも、再生計画などに違反したような場合には、再生計画の取消や手続廃止決定がなされ、破産へ移行します。
以上で、民事再生法の流れはご理解頂けたものと思われます。
第2 破産手続
1.破産手続開始
旧法の「破産宣告」という言葉を、他の倒産手続と同様に、「破産手続開始」という用語に改められました。
「宣告」という言葉には重い響きがあり若干時代遅れであること、他の倒産手続と合わせる意味で、用語を改めたものです。
2.破産手続開始の申立
(1)管轄
管轄裁判所の拡大が図られました。
親子会社(5条3項・4項)、連結親子会社(5条5項)、 法人代表者(5条6項)、個人連帯債務者及び主債務者と保証人の関係にある個人・夫婦(5条7項)
これらの関係にある会社ないし人が他の裁判所に倒産事件が係属しているときには、競合管轄が認められました。
これらの規定については対象となる異種の倒産手続の違いがあります。
すなわち、親子会社関係は破産・民事再生・会社更生手続を網羅していますが、法人代表者の場合には法人が破産・民事再生のとき、個人連帯債務者・夫婦は破産のみに限られています。もっとも、個人連帯債務者・夫婦の場合、自然人については、会社更生手続はそもそも適用がありません。
債権者多数の事件については、以下のとおり、管轄裁判所の拡大が図られました。
債権者500人以上の場合には、高等裁判所所在地を管轄する地方裁判所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、高松)にも管轄が認められました(5条8項)。
債権者1000人以上の場合には、東京地方裁判所または大阪地方裁判所にも管轄が認められました(5条9項)。
これらの管轄により、事案の処理に適切な裁判所の選択が可能となり、また、専門的処理体制の整った大規模庁(高等裁判所所在地の地方裁判所)または東京地方裁判所および大阪地方裁判所の利用が可能となり、破産手続の円滑な進行に資するものです。
(2)保全処分
  1. [1]強制執行等の中止命令(24条)
    改正法は、破産債権や財団債権に基づく強制執行等の場合にも、中止命令を発令できると制度を新設しました。
    新設された規定です。民事再生法、会社更生法には同様の規定がありましたが、旧破産法には規定がありませんでした。
  2. [2]包括的禁止命令(25条)
    強制執行等を包括的に禁止する命令です。
    新設された規定です。民事再生法、会社更生法には同様の規定がありましたが、旧破産法には規定がありませんでした。
    禁止命令の対象は、破産債権だけでなく、財団債権に基づく強制執行・一般先取特権の実行、国税滞納処分を含みます(国税は滞納処分より1年前のものは財団債権となります)。
  3. [3]保全管理命令(91条)
    保全管理命令を発令できるのは、債務者が法人の場合に限定されています。 個人の場合には、事業用財産と家事用途のものと区別が難しいなどの理由から、保全管理命令の対象から、個人を除外したものです。もっとも、魚市場の仲卸売商人のような営業権があり、破産するとその営業権が喪失する場合の個人について、破産前に換価するために保全管理命令を発令できないという立法上の欠陥が残されてしまいました。
  4. [4]否認権のための保全処分(171条、172条)
    破産手続開始がされた後に破産管財人が否認権を行使するための保全処分で、旧破産法にはなく、改正法で新たに認められたものです。
3.破産手続開始の効果
(1)破産者等の説明義務の強化
旧破産法でも破産者等は説明義務を負っていました(旧153条)。この点は、改正法でも変わりません(新法40条)。
改正法により、説明義務を負うものが、従業者・元従業者にも拡大されましたが、裁判所の許可のある場合に限定されています(40条1項5号・2項)。
(2)重要財産開示義務(41条)
債務者は、重要な財産について、申立にあたって、開示する義務を負い、書面に記載して裁判所に提出しなければなりません。
なお、個別執行である民事執行法では、一定の債務名義を有する者に対して、財産を開示する制度を設けています。
(3)
説明義務違反罪が重罰化(268条・269条。旧法の懲役1年から改正法では懲役3年へ改正)され、破産者等の説明義務の強化が図られています。
(4)破産管財人の職務執行の確保
裁判所の許可に基づく警察上の援助(84条)、職務妨害罪(272条)が新設されました。
これらの制度は、破産管財人の業務を円滑ならしめるためであり、破産管財人にとっては、朗報です。
個別執行である民事執行法では、執行官に対する同様の保護があったのに、包括執行である破産手続では旧破産法では破産管財人に対する保護がありませんでした。
4.破産債権等
(1)債権者集会の任意化
財産状況報告集会が省略できる場合が規定されました(31条4項)、破産管財人の計算報告集会が省略できる場合が規定されました(89条)
事業継続は、裁判所の許可によることとされました(36条)。
(2)債権者委員会制度の創設(144条以下)
監査委員制度が廃止されたことにより、債権者の利益保護のために新設されたものです。
(3)債権届出
異時廃止見込みの場合の債権届出期間、債権調査期間の定めの省略ができるようになりました(31条2項・3項)。
ただし、東京地方裁判所では、異時廃止の見込みが判明するには時間がかかることから、この方式は採用しない予定です。
旧法下での東京地方裁判所の運用は、債権調査期日において、異時廃止の見込みのときは、債権調査を留保して、ただちに異時廃止決定をなすことによって対応していました。
したがって、新法下でも、この方式が運用上、使われます。
(4)届出期間の制限
債権届出は、原則として、一般調査期日・期間内(112条)に限られます。
5.債権調査
(1)
債権調査期間の制度が設けられたことにともない、債権調査期日において調査する方式と、書面による債権調査期間の方式のいずれかを選択できるようになりました(116条1項・2項)
(2)債権確定
異議ある債権を決めるために、決定による債権査定決定手続が導入されました。
旧法では、異議のある債権の確定のためには破産債権確定訴訟という訴訟手続によっていました(旧244条以下)が、時間・費用がかかるという批判がありました。
新法は、査定手続により、簡易・迅速に債権の有無・金額を決定することを目的としたものです。
査定申立期間が限定されています(125条)。
旧法では、破産債権確定訴訟を提起するのに時期的制限はありませんでしたが、新法では、査定申立の出訴期間を限定することにより、破産債権の確定をすみやかにすることとしました。
破産債権査定の決定に対して異議のあるものは、破産債権査定異議の訴え(126条以下)を提訴することができます。
6.労働組合等の手続関与
労働者保護のために、破産手続開始決定の通知(32条3項4号)、破産管財人の情報提供努力義務(86条)の制度が設けられました。
7.破産財団の管理
(1)破産管財人の貸借対照表作成義務
破産管財人は、原則として貸借対照表などの作成義務を負いますが、一定額以下の破産財団しかない場合には、破産管財人は、貸借対照表の作成義務を免除されます(153条3項)。
(2)財団財産の引渡命令
財団財産の引渡命令(156条)は、破産者に対して決定による手続で、破産財団に属する財産を引き渡すことを命じるもので、新たに設けられたものです。
旧法では、破産者が破産財団に属する財産を引き渡さない場合に、破産宣告決定を債務名義として強制執行できるかについては、解釈上争いがあり、東京地方裁判所執行部の見解では、破産宣告決定には執行すべき財産の特定がないので、破産決定を債務名義として強制執行することができないとする見解をとっていました。しかしながら、包括執行である破産手続で、個別に債務名義を要するとすると、その実効性が著しく薄れます。そこで、破産手続を実効的かつ迅速にするために、この規定が設けられたものです。
(3)破産管財人の行為の許可
破産管財人が訴えの提起など一定の行為をするためには破産裁判所の許可が原則として必要です(78条1項)。
例外として、破産裁判所の許可に関する裁量(78条2項15号、3項)の規定が新設されました。
(4)法人の役員の責任の査定手続
法人の役員の損害賠償責任査定制度の導入(178条以下)は、簡易迅速な手続で、法人の役員についての損害賠償責任を追及する制度を設けたものです。
8.破産財団の換価
(1)任意売却・担保権消滅請求制度(186条以下)
消滅許可申立て(186条。財団組入れを含む=組入れ額の協議義務、売得金の意義=186条1項1号参照)
破産財団の形成を図る利益と担保権者の利益の調節を図るために、破産管財人は担保権者と事前に協議する義務を負います(186条2項、3項7号)。
また、担保権者の利益を不当に害する担保権消滅許可申立は却下されます(186条1項但し書き)。
担保権者による対抗措置としては、以下の2つの方策があります。
  1. [1]担保権実行申立て(187条。合意による排除)、
  2. [2]担保権者の買受申出(188条。破産管財人が許可申請した売買代金額の5%の増価の必要があります)→消滅許可決定(189条)→金銭納付・登記抹消嘱託(190条)→配当実施(191条)
(2)商事留置権の消滅請求(192条)
商事留置権とは、商行為によって生じた債権に基づき、商人(典型例は会社です)が占有する物品等をとどめ置いて、その物品等から優先的に債権の弁済を受けられる権利です。
破産管財人による商事留置権の消滅請求は、「当該財産が継続されている事業に必要なものであるとき、その他財産の回復が破産財団の価値の維持又は増加に資するとき」に認められます。
9.配当手続
(1)配当公告に代わる通知の制度(197条)
旧法では配当をする場合には官報公告を必要としていました(旧260条)が、改正法は通知をもって代えることができるとしています。
(2)別除権者の配当参加
  1. [1]被担保債権が担保されなくなったことによる配当参加(108条1項、198条3項)
    旧法と同様の配当参加の方法です(旧277条参照)。
  2. [2]根抵当権の特則(196条3項、198条4項)
    旧法では、根抵当権の極度額を超える額についても配当の可能性があることを理由として、別除権の実行処分又は放棄がなされない限り、根抵当権者の配当加入は認めないのが実務の取扱いでしたが、新法は、極度額を超える額については、当然に配当参加できると規定しました。
(3)少額配当の特例
配当額が1000円未満の少額配当については、受領意思の届出が必要となります(111条1項4号、201条5項)。
(4)簡易配当の特例
  1. [1]簡易配当
    簡易配当ができる場合として、以下の場合が定められました。
    1. (ア)配当額の合計が1000万円未満の場合(204条1項1号)
    2. (イ)破産手続開始時に異議の有無を確認してする場合(同条1項2号)
    3. (ウ)配当時に異議の有無を確認してする場合(同条1項3号、206条)、
  2. [2]簡易配当の内容(204条、205条)
    1. (ア)債権者への周知方法を、旧法では官報公告をも必要としていたのを廃止し、個別通知に限定しました。
      官報公告が実務上数週間かかっており、しかも、実際上官報を見る債権者が殆んどおらず、かつ、官報への配当公告は2万7525円を要していたため、時間・労力・費用の無駄との批判があったことによります。
    2. (イ)除斥期間を旧法の2週間(旧273条)から1週間に短縮しました。
    3. (ウ)配当表に対する異議申立についての即時抗告を許さないこととしました。
    4. (エ)配当額を定めた場合の債権者への個別通知を省略できることとしました。
(5)同意配当(208条)
民事再生法の特長
1.債務者のメリット
民事再生法は債務者にとって、どのようなメリットがあるかを述べます。
◆債務者が利用しやすいこと
  1. (ア)誰でも利用できること
    和議と同様に、個人から大企業まで利用できます。法人は、株式会社に限られず、有限会社、医療法人、学校法人、協同組合など全ての法人が利用できます。 対象が株式会社に限られている会社更生法との大きな違いです。
  2. (イ)従来の経営者が継続できること
    原則として、従来からの経営者が経営を続けられるようにしました。
    従来の経営者が再建に努力するので、費用や時間を最小限にできるメリットがあります。
    この点は、会社更生との大きな違いです。会社更生では、担保権や公租公課を著しく制約し、その他債権者に多大な犠牲を強いるので、従来の経営陣から経営権を剥奪されます。
    そのため、経営者が会社更生の申し立て自体をためらうことになりかねません。民事再生法では、従来の経営者の経営権を認めました。
    これは、中小企業などでは経営者の個人的な経営手腕が再建に不可欠なことを考慮する立法趣旨です。
    ただし、弊害が生じた場合には管財人を選任して、経営権を剥奪することもあります。
  3. (ウ)申立て原因が広いこと
    手続開始原因を破産原因(支払不能、債務超過)が生じる前でよいとして広げました。
  4. (エ)手続の申立と同時に弁済条件などの再建案を提出しなくてもよいとしました。
    手続開始当初は、財務状況の正確な見極めが困難なためです。
  5. (オ)担保権を制約できること
    民事再生法では、原則として担保権は手続によらずして随時行使できるものの、例外的に、以下のような制約ができます。
    まず、
    1. 1.裁判所は、担保権の実行を中止、禁止することができます(民事再生法31条)。
      また、
    2. 2.債務者は、担保権の対象となっている目的物で、事業の継続に不可欠な場合には、目的物の価額を支払うことによって、担保権の抹消を請求できます(民事再生法148条以下)。
      例えば、極度額1億円の根抵当権が設定されている場合には、目的物の価額が6000万円としても、1億円を支払わなければ担保権を抹消できないのが一般原則ですが(担保権の不可分性)、この制度により例外的に目的物の価額の6000万円を支払えば担保権を抹消できます。
  6. (カ)可決要件の緩和債権者の同意要件を、出席又は書面投票をした債権者の頭数の過半数で、総債権額の2分の1以上の同意で足りるとして、要件を緩和しました(民事再生法171条以下)。債務者の再生を容易にするためです。
以上のとおり、民事再生法は、債務者にとって、非常に使い易い制度です。
2.債権者側のメリット
ここでは、債権者側のメリットについて触れます。
債権者のメリットには、大別して、
  1. (a)再建計画が履行されることを確保すること
    そして、
  2. (b)手続の公正の確保 の2点に分けられます。
  1. (ア)債権者も申立てができること
    再生手続の申立人を債務者のみならず、債権者でもよいとした点は、債権者保護のためです。
    なお、会社更生では、債権者、債務者双方に申立権があります。
(a)再建計画が履行されることを実効的に確保していること
  1. (イ)債権表の記載に強制執行力が与えられたので、債務者が支払をしない場合には、債権者は強制執行できます。
  2. (ウ)従来からの経営者が管理を継続することを原則としながらも、それでは不都合な場合には、裁判所が監督命令を発して、監督委員や管財人などによる公正な監督管理をすることができるようになりました。
    すなわち、民事再生には、以下の3通りの場合があります。

    1. 1.経営者の自主再建に委ねられる場合(自主型)
    2. 2.経営者の自主再建を監督委員などが監督する場合(後見型)
    3. 3.経営者の経営権が剥奪され、管財人による管理がされる場合(管理型)
    東京地方裁判所など主な裁判所では、原則として監督委員を選任し、上記の2(後見型)が原則とされる扱いです。
    自主型では、再生計画の認可により、再生手続終結決定がなされ、裁判所の手を離れます。
    後見型では、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画認可決定の確定後3年経過時より、裁判所の手を離れます。
    管理型では、再生計画が遂行されたとき又は遂行が確実であるとき、裁判所の手を離れます。
    後見型及び管理型で、裁判所の監督を継続する点は、履行確保のためです。
    会社更生では経営者ではなく管財人による管理ですが、経営者の自主再建に弊害がない場合にも管理型を採用すると、時間も費用もかかるので、この点を改善したものです。
    会社更生では、更生計画を完遂するまで管財人による管理がなされ、裁判所により監督されます。
  3. (エ)債務者が再建案を実行しなければ、破産手続に移行し、債権者は破産手続による弁済を受けられます。
    債務者としては、破産のリスクを負うので、誠実に再建、弁済に努めなければなりません。結果 として、弁済の履行の確保につながります 。
  4. (オ)債務弁済禁止の保全処分発令後に民事再生手続の申立てを取下げることを制限したこと。
    民事再生法では、保全処分発令後の取下げを制限しているので、濫用的な申立てを防止できます。
(b)手続の公正の確保
再生計画案の履行の確保のみならず、手続の公正を確保し、債権者の保護を図る制度として、以下のような制度が設けられました。
  1. (カ)債権者への情報開示
    債権者に事件記録等の閲覧謄写権を認めるなどして、情報開示の制度を設け、債権者の保護を図っています(民事再生法125条、17条、18条)。
  2. (キ)否認権
    否認権の制度が設けられました(民事再生法127条以下)。
    否認権の対象となる行為は、一部の債権者のみを優遇する偏頗な弁済や担保提供などです。
    また、否認権により、会社財産が不当に散逸された場合に取り戻すことができます。
    否認権の制度によって、公正と平等が保たれるのです。
  3. (ク)役員に対する損害賠償請求の査定
    役員についての損害賠償請求の査定(民事再生法142条以下)が設けられ、経営者の責任を簡易に追及できることとなりました。
以上のとおり、債権者にとっても、民事再生法はメリットのある制度となっています。

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