破産法の概要
1.倒産とは
倒産とは何でしょうか。財産を使い果たす場合に限りません。
会計上は債務超過ではなく黒字であっても、例えば売掛金があるのに支払いを受ける前に資金不足となれば倒産します(勘定合って、銭足らず)。
現象面から見ると、倒産は、支払停止の現れです。
支払停止とは、債権者からの支払請求に対して、支払えないことを債務者が表明する行為です。
手形不渡は、支払停止の代表例です。
銀行取引停止処分を受けるのは、手形や小切手の不渡を同一手形交換所で6か月以内に2回出した場合ですが、手形などの不渡を1回でも出した場合には、原則として決済資金が足りずに支払を停止したものと受け止められます。
また、支払停止には、廃業、閉店、夜逃げなどもあります。
債務の返済を一時的に猶予するよう債務者が申し入れる行為も、支払停止に当たります。
2.倒産手続の種類
倒産処理手続にはどのようなものがあるか、概観しておきましょう。
倒産手続には、目的を大別して、倒産した企業等を清算解体する清算型手続と、再建する再建型手続があります。
倒産処理の手法には、以下の種類があります。
- 1破産法(1922年制定)による破産
- 2会社法(2005年制定)による特別清算
- 3民事再生法(1999年制定)による民事再生手続
- 4会社更生法(1952年制定)による会社更生手続
- 5裁判所の手続によらない私的整理(任意整理、内整理ともいう)
- 6民事調停法(1951年制定)・特定調停法(1999年制定)による債務調停手続
上記1から4までを倒産四法といいます。
(1)破産
破産法は、清算型手続の一般法です。利用できる主体に限定はありません。
件数的には倒産四法の約9割を占めています。
個人の破産は、サラリーマンや主婦などだけではなく、会社の社長など役員の破産も含みます。
自己破産のうち貸金業からお金を借りてしまったのは、おおむね破産総件数のうち約8割です。
(2)特別清算
株式会社のみを対象とした簡易な清算型手続です。
破産と異なり、清算案について出席債権者の過半数かつ総債権額の2/3の同意が必要なため、債権者数の少ない会社の清算や、税務対策として子会社の清算に利用されています。
(3)民事再生
民事再生法は、再建型手続の一般法です。
民事再生法は、中小企業を主な対象とした新しい再建型手続です。
民事再生法を利用する主体に限定はなく、全ての個人、法人が対象です。
(4)会社更生
会社更生法は、株式会社のみを対象として再建型手続を定めています。
非常に重厚な手続であり、債権者に多大な犠牲を強いるため、上場企業などの大規模な会社を主な対象に利用されています。
会社更生法は業種的にはメーカー、建設業、流通業が多く、商権、技術力や資産があるので企業努力により再建できる余地があることを示しています。
(5)私的整理(任意整理)
私的整理は、特に根拠法令がないもので、債務者と債権者との個別 の話し合いによる整理の仕方です。
私的整理にも、清算型と再建型があります。
わが国では私的整理が伝統的に多いとされ、時間も費用も余り必要とせずに処理できる点が魅力とされています。
しかし、私的整理を担当する弁護士費用は必要ですし、裁判所によらない手続であるため、強硬な債権者に対してのみ不公正な弁済が行われたり、債務者が財産隠匿を図ったり、きちんとした弁済も行わない場合もあります。
したがって、法的倒産手続をとらない残りの大部分は、任意整理ではないかという意見もありますが、実際上は、法的手続を取るだけの資力もないので、夜逃げ、放置という事例も少なくないものと思われます。
(6)債務調停・特定調停
債務調停手続は、個人、法人を問わずに利用できます。
従来から主に多重債務者により貸金業関係調停として利用されてきたものであり、消費者金融などの債権者に対して、債務者が簡易裁判所において調停手続を申し立てて、弁済の猶予、分割払い、債権カットなどを話し合いによって解決する手続です。
「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(特定債務調停法)により、一般
の民事調停の例外として、民事執行手続を保証金なしで停止する手続、債務者の住所地などの裁判所において一括して申し立てることができること、遠隔地の当事者が書面
により調停案を受諾するなどの特例が新設され、さらに利用しやすくなりました。
債務者が支払いを全て拒否するわけではなく、債権者に一定の譲歩を求めながら債務の支払いに合意する点で、一種の再建型に位置づけられます。
ただし、債権者が拒否すれば調停案が成立しない欠点もあります。